ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「視える作家」が描く「引き寄せる猫」との日々

猫怪々  

イラストブックレビューです。

編集

 

ペット可、猫に優しい街…などの条件に合う物件を求め、ようやく
ピッタリなマンションを見つけて購入した著者。ある日、路地裏で
ぐったりとした子猫を見つけ、慌てて病院へ連れていく。飼うことを
決意した著者だが、子猫はいくつもの病気を持ち、おまけに怪奇現象
まで連れてきた。大事な子猫のためにあらゆる対策を講じる、愛情あふれる
育猫日記。

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お化けの類が大好きで見たり聞いたりした物の怪を文章に綴る著者。
引っ越し先の条件の中にも、

いい神社、または寺があり、氏神様と気が合うこと、
そして何もいな…くない場所!

という項目も入っています。見える方ならではのチョイスですよね。
見えない自分にとっては恐怖の対象でしかありませんが、見えないから
「見えたらどうしよう」という怯えた気持ちがなお一層怖さを増大させて
しまうのかもしれませんね。

そして著者が拾った子猫。具合が悪そうなので病院に連れて行きます。
二泊三日の入院で戻ってきた子猫は、血液検査で猫白血病のウィルスが
陽性。しかし、この子猫の面倒を見る!と決意した著者は家で飼うための
準備を始めます。が、子猫の面倒は身の回りのお世話だけではなくて…。

「のの」と名前をつけて、子猫につきっきりの毎日。ときおり、なまぐさい
臭いが部屋の中を漂うようになります。ののちゃんをひざに抱え、般若心経を
となえると、子猫の背中から真っ黒な小蝿のような小さなものが何百も、
羽音を立てて飛び去ったのです!怖えぇぇ!!!ナニソレ!?

その夜、寝るときに著者の瞼に浮かんだのは、体が潰れ、血まみれで目を見開いた
犬の姿。また別の日も、あらゆる死にかけた動物の姿が浮かび上がる。
どうやら、死にかけた子猫を拾ったことで、羨ましく思った動物たちが
自分も助けてほしい、とやってきたらしい。いやいや、どうすんのコレ。

お札を貼って見たり、お経をとなえてみたり、掛け軸を設置してみたり。
祈祷師や霊能者に相談してみたりとあらゆる手を使い、猫の体調はどんどん
回復していくのですが、著者のほうが体重が落ちてしまうという具合。
掛け軸がいい仕事してくれたようで、なんとか霊は退散した様子ですが
子猫が起こすトラブルはこれだけでは済まされません。

ホラー要素もあり、怖い描写もあるのですが、結局は猫を愛する著者の気持ちが
溢れまくっている日記です。愛があれば物の怪だって、病気だって、逃げ出さずに
全力で立ち向かっていけるのだ!という著者の強い気持ちが伝わってきます。
そしてこれだけ必死にののちゃんのために駆けずり回っている著者の苦労を
気にせず、好き勝手に寝転んだり暴れまわったりするののちゃん…猫あるあるですね。

神社やお寺に興味を持ち、人ならぬモノが見える著者。猫との出会いも、神様が
引き合わせてくれたご縁であると解釈し、大事にしようと考えています。
そして生きるモノの生命についても地に足のついた、しっかりとした考え方を
持っているところに好感が持てます。
視える著者自身が、引き寄せる猫を「引き寄せた」のかもしれませんね。
猫好きさんにはもちろん、物の怪の類に興味がある方にもオススメの一冊です。

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