ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

未来に目を背けるのも向かっていくのも自分自身。

あの日にドライブ

イラストブックレビューです。

編集

 

牧村伸郎は、銀行を辞めてタクシードライバーをしている43歳。
次への仕事のつなぎのつもりではじめたタクシーの運転手だが、営業成績も
伸びず、疲れ果てて帰り、転職のための勉強もはかどらない日々を送っていた。
そんな伸郎は、ある日ふと思い立ち、青春時代を過ごした街へ向かい、もう一度
人生をやり直すことができたら、と考えはじめる。

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タクシードライバーをしているのは生活のため。今だけだ。俺だっていつかは…と
思いながらも日々のノルマは果たせず、子どもたちからは冷たい目線を
向けられ…と、パッとしない日々を送る伸郎。

43歳という年齢は、引き抜きやらそれなりの職歴がないと、転職は難しいですよね。
伸郎にしても、自分が務めていた誇り高き銀行というバッヂは外してしまえば
何の役にも立ちません。ある意味、ここから伸郎の本当の人生は始まったと
言えるのかもしれません。

しかし、当の本人はといえば、ノルマを達成できないのはタクシー利用が
減っているこのご時世のせい、車にカーナビが設置されていないせい…などと
ぼやいている様子。そして、本人は気をつけているようですが、体から滲み出す
タクシー運転手なんて…といったような見下した空気。

まあ、はっきり言って、銀行という箱に入って、自分の能力があると思い込んでいた
けれども、実社会であまり役に立たない、愚痴の多い中年というところ。
これは、銀行という古くからの縦割社会で、上司は絶対という環境にストレスを
抱えながら踏ん張ってきたことにもよるのかもしれません。そんな環境が受け継がれて
いる中で働いていたら、自分のストレスは部下に威張ることだ、なんて上司が
発生するのも仕方のないことかも。

伸郎は、ふと思い立ち、学生時代に付き合っていた女性の自宅の方までタクシーを
走らせます。すると、運良くお客を捕まえることができたのです。それも何度も。

そこで伸郎が得たのは「客を得るのは偶然だ」ということ。
え!?偶然かよ!?
いやしかし、謎の先輩ドライバーの後をつけたりして、自分から客をつかまえるための
ヒントを得るために動き出した伸郎は、成績を伸ばし始めます。
ですので、「偶然を得るための最大限の努力をした結果」、客を得ることにつながる
事を学んだのです。

学生時代に付き合った彼女と結婚していたらどうなっていたのだろう。
んな事を考えては、日々のつらさから目を背けていた伸郎ですが、銀行員であるとか、
今タクシー運転手であるとか、自分が思う仕事への偏見や自分への思い込みから解放された時、
自分の周囲にある幸せや、喜びに目を向けることができたのです。

自分だったら、別れた相手と結婚していたらどうだったのだろうなんて、
考えるのも時間のムダなんでやりませんけど、伸郎はそうすることで、ヘタレなダメ男っぷりが
強調されて笑ってしまいますね。

今立っている場所が自分の生きる場所。
そう理解して、生きていくことが自分と、自分の周囲の人たちが幸せになることに
繋がっていくのだということ教えてくれる物語です。

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