ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

表紙から入る読書もいいものです

本屋さんでランダムに本を選んでいるつもりなのに、作家もジャンルも偏らないように
したはずなのに、何だか似たような本を買っている気がする・・・?
そう、それは表紙のイラストレーターさんが一緒だったという単純な理由でした。

そういや20代の頃は表紙のイラストが好きで、買っていた小説がいくつかあったなあと。
最初に、その絵柄に惹かれて手に取ったのは確か、栗本薫の『天狼星』。
表紙を手掛けているのは大御所、天野喜孝

 

天狼星

天狼星著者: 栗本 薫

出版社:講談社

発行年:1989

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メガネのひょろっとした、心優しき探偵、伊集院大介が、連続殺人鬼シリウス
はじめて対決することになった物語。この表紙の、暗くて美しく、恐ろしいけど
目が離せない雰囲気が、物語にぴったりとはまりました。
表面的な美しさをたたえた人物の背面に潜む、幾重もの影を感じさせてくれます。
伊集院大介シリーズをはじめ、著者同名の若者、栗本薫が探偵として
活躍するシリーズなど、栗本薫作品にハマるきっかけとなりました。

そして、こちらもまた有名な方ですが、そんなに得意でないSFファンタジー
ものに手を出すきっかけを与えてくれた藤川桂介の『宇宙の皇子』。

 

 

↑あっ ひどい!表紙が出ない(泣)。

飛鳥時代壬申の乱の最中、頭に角が生えた少年が誕生。その姿によって周囲から
蔑まれ、天涯孤独の身に。老婆に拾われ、育てられた少年は『宇宙皇子』と名づけられ
様々な出会いや別れを経験し、成長していきます。

イラストはいのまたむつみ。萌え系のイラストのようにも見えますが、目を惹くのは
その透明感。日本画を思わせるような、淡く、筆の動きが見えるようなその塗り方が
壮大に広がる世界観を見事に表しているように思います。

最後はこちら。

 

スカイエマ

スカイエマ著者:

出版社:玄光社

発行年:2014

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この方が表紙を手掛けた文庫を何冊も持っているのにもかかわらず、「もっと見てみたい」
という気持ちが強くなったのでイラスト集を買ってみました。

まずはそのジャンルが多岐にわたっていることに驚きます。
現代物、時代物、海外物、子供向け。出版社も大手はほぼ網羅しているようですので
文庫の棚をまわれば、スカイエマの表紙に当たる、といったところでしょうか。

目を惹くのは構図と色。躍動感が溢れるポーズの主人公たちが、狭い紙のスペースから
飛び出して行ってしまいそうです。そして少しくすんだような青とオレンジが、
哀愁を感じさせるのです。力強い、ゴツゴツとした線描もいいです。

どんだけ好きなのかしら、と手元にあるスカイエマが表紙の本を調べてみたのですが
『その時までサヨナラ』山田 悠介 (著)、『こっちへお入り』平 安寿子 (著)、
『刺青殺人事件 新装版』『神津恭介、密室に挑む―神津恭介傑作セレクション』高木 彬光 (著)、
『ペナンブラ氏の24時間書店』ロビン・スローン (著), 島村 浩子 (翻訳)、
『さよなら、シリアルキラー』『殺人者たちの王』『ラスト・ウィンター・マーダー』
『運のいい日』バリー・ライガ (著), 満園 真木 (翻訳)、『うずら大名」畠中恵(著)、
などなど。ラインナップを見ても、幅広いジャンルを手掛けているのがわかりますね。

表紙は本の顔。手に取る強い引きと、読んだ後にぴたりとハマる絵柄であるか、好感が
持てるものであるかなど、様々な条件が求められると思います。
大御所しかり、現代の売れっ子しかり、絵が素晴らしいのはもちろんなのですが、
『物語の顔』として最適なものを提供できるところがスゴイ。
天野喜孝いのまたむつみらの作品は20年たっても全く色あせていません。

物語が素晴らしいのは当然ですがその魅力をさらに引き出し、より広い層の読者を
獲得する役割が表紙にはあると思います。そんなことを考えながら、目に飛び込んで
くる表紙はどれかな?と本屋の棚を歩くのも楽しいものです。

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