ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

教科書に載っていない「世界」はこんなにも驚きに満ちている

国マニア 世界の珍国、奇妙な地域へ! 』のイラストブックレビューです。

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小さくても立派にやっている極小国家、国の中で独立するもう一つの国、
ワケあって勝手に独立宣言した国、常識だけでは判断できない珍妙な国・地域など
世界の珍しい国や奇妙な地域を紹介。

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世界にはいろんな国があります。例えばニュースでたまに聞くバチカン市国
面積は0.44㎢で、日本の皇居の三分の一強。世界最小の国家です。
しかしながらローマ法王が暮らすバチカン宮殿や、バチカン美術館などが建つ
カトリックの総本山で、住民はほとんどが聖職者。そして、バチカン
国籍を持つものは法王庁の高官や衛兵、外交担当の職員などです。

面積は小さなバチカンですが、国際社会における影響力は日本をはるかに凌ぎます。
人口は1000人に満たなくても、カトリック信者という潜在的な国民は10億人以上
ですし、法王が統率する聖職者は100万人。面積は小さくとも立派な大国なのです。

また、ギリシャ北部にあるアトス山は、ギリシャ政府の権限が及ばない東方正教会
自治領。ここには大小合わせて20の修道院が散在し、住民のうち1600人は修道士。
修道院の代表が評議会を構成し、そのうち一人が毎年交代で長官に就任するという
システムです。

ギリシャ本土とアトス山との間に道路はなく、フェンスで隔絶されており、一日二便の
船だけが下界との交通手段となっています。その上なんと女人禁制で、女性の観光客は
沖合の船の上から眺めるしかできないのだとか。おまけに飼われている牛までオスだけ
というから驚きです。こんな場所があるのですね。

そして、領土を持たないマルタ騎士団マルタ騎士団の起源は、十字軍遠征の前に
エルサレム付近に作られたキリスト教巡礼者向けの宿泊病院で、巡礼ルートの
警備もしていました。やがて、聖地防衛に尽くしたということで、1113年には
ローマ法王から聖ヨハネ騎士団として公認されます。その後、イスラム教徒により
エルサレムから追い出され、キプロス島ロードス島マルタ島と拠点を変えていき、
マルタ騎士団とよばれるように。その後マルタ島はイギリスのものとなり、イギリスは
領土は与えないがマルタ騎士団に「国家としての体面」を与えたのです。
領土は持たないマルタ騎士団は、イタリアの敷地内での外交特権が認められており、
医療活動を柱としてラテンアメリカ、アフリカや旧ソ連諸国など、多くの国と外交を
結んでいます。

他にも誰でもノービザで自由に商売できる国や、ハローキティ金貨が使える島々、
日本人でも自由に暮らせる不思議な場所など、さまざまな国の歴史的な概略と
現在の様子を、一国4〜5ページ程度で解説しています。

島国日本で生まれ育った感覚ではどうにも理解できないような奇妙な国や
地域がたくさん登場します。その背景には、大国に支配されたり、侵略されたり、
逆に大国の支配なしではやっていけないなどの事情を抱え、必死に生き残ろうと
してきた民衆たちの姿があります。

「国」の定義とは一体なんなのか。
その常識が覆されるような驚きの世界を見せてくれる一冊です。


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