『ちょっと一杯のはずだったのに 』のイラストブックレビューです。
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ちょっと一杯のはずだったのに (宝島社文庫 「このミス」大賞シリーズ)
- 作者: 志駕晃
- 出版社/メーカー: 宝島社
- 発売日: 2018/06/06
- メディア: 文庫
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漫画家であり、ラジオの人気パーソナリティでもある西園寺沙也加が
殺された。彼女の首には、ラジオディレクターで、彼女の恋人でもある
矢嶋直弥のネクタイが巻かれていた。警察に疑われた矢嶋は、犯行を否定
するが、泥酔していたために記憶がない。おまけに、犯行現場は密室状態
であったため、どのようにして密室を作ったのか、その謎を解くように
警察に迫られる。
秋葉原FMの人気パーソナリティ、西園寺沙也加が絞殺死体で見つかりました。
発見者はラジオディレクターで、沙也加の恋人の矢嶋と、マンションの管理人。
死体が見つかった彼女の部屋は、密室状態となっていたのです。
部屋の内側から鍵がかかっていて、なおかつ外側からは侵入するのは不可能な
状態です。
矢嶋は仕事に来ない沙也加を呼び出すために、彼女のマンションへと
やってきました。以前にも沙也加が寝坊したりして、番組に遅刻しそうになったこと
があったため、その時と同じように管理人に話をして、部屋の鍵を開けてもらった
のです。そこで沙也加の死体を発見したのでした。
彼女と交際していたこと、彼女に結婚を申し込んで断られたこと。
泥酔していたために、記憶がないこと。
彼女の首には矢嶋のネクタイが巻かれていたこと。
あらゆる状況が矢嶋にとって不利な方向を指しています。
おまけに、酒を飲んで記憶を無くした時特有の気の弱さで「もしかしたら
自分がやってしまったのかも」なんて思い始める始末。いやいや、いくら
なんでも酔って人は殺さないだろ、と思いつつ、記憶を無くした日の自分の武勇伝を
聞くと、思いがけない行動をしちゃうことってあるのかもね…なんて
思ってしまうのが酔っ払いです。
そこで、密室マニアの弁護士、手塚が登場し、密室の謎を解き、真犯人の
正体を暴きます。この手塚も密室マニアだけあって、なかなかクセの強い、
面白い人物です。矢嶋の真面目で誠実な雰囲気と好対照です。
そして、登場人物たちを集めて密室の謎を解説するシーンが、あっと
驚く設定です。さすがラジオのお仕事をしている人たちだな、と思わせてくれます。
お酒を飲みすぎて記憶を無くした経験がある人はドキッとするはず。
しかし、飲みすぎて失うものは記憶だけではないかもしれません。
大事なものを失ってしまう前に、飲みすぎは控えなくては…と心に誓うのでした。