ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

あなたにはこの結末が予想できますか

眠りの牢獄 』の

イラストブックレビューです。

 

小説家である浦賀の恋人、亜矢子は五年前に浦賀とともに
地下室に向かう狭い階段から転がり落ちた。
浦賀はすぐに意識が戻ったが、亜矢子はそれ以来意識不明の昏睡状態と
なっている。浦賀は友人の北澤、吉野とともに亜矢子の兄に呼び出され、
三人は地下室へ閉じ込められてしまう。解放の条件は、亜矢子を突き落とした
犯人を証明する事だった。その一方で、進められる代理殺人の本当の目的とは。

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地下室に閉じ込められた三人と、メールだけのやり取りで交換殺人の
打ち合わせをする二人。一見、何の関係も持たないような二つの出来事が
最後の驚愕の結末へと繋がっています。

登場人物たちは、いずれも誰かが誰かに対して強い愛情を抱いています。
それは、両思いであったり、一方通行であったりとさまざまな状態です。
彼らの愛情の矛先も、この物語を読み解く重要なポイントとなります。

地下室に閉じ込められた三人が、日にちが経つにつれ、食料がなくなり、
水が途切れ、異様な状況の中で次第に追い詰められていきます。
そこで起こった陰惨な出来事は、正気でいられるギリギリのラインで
あったのでないでしょうか。

一方、メールだけのやり取りから心を通わせ、交換殺人を実行するに
至った二人。一方はなるほどと思うような動機を持っていますが、もう一人は
自己中心的かつ深く考えないタイプの人間で、あまり同情できません。
こちらの同情できないタイプの人間が殺した相手が…えっ!?
となります。読者からするとどうして?意外すぎる!!という人物です。

交換殺人の計画も、少しずつ「あの人物を狙っているのか」と思わせる
伏線が出てきます。同情できないタイプの人間たちが毒を振りまく行動に
気を取られているうちに、交換殺人を実行した人物は捕まり、地下室に
閉じ込められていた者たちは何とか救出されます。
亜矢子を階段から突き落とした人物も、明らかになったように思われ、
何となく解決したのか…といった状況の中で衝撃のラストが訪れます。

構成の緻密さ、計算し尽くされた伏線のタイミングと分量。
そして全体に漂う歪んだ愛情、憎しみ、悲愴感。
読者の感情までもコントロールされてしまうような、圧倒的な
「すごいミステリ」です。

 

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