ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

広告の力で、国民を戦争賛成に誘導できる!?

プロパガンダゲーム 』の

イラストブックレビューです。

 

大手広告代理店の最終試験へ臨む8人の大学生。
彼らに告げられた課題は、宣伝によって仮想国家の国民を戦争に導けるか
どうかを争うゲームだった。勝敗の結果、そしてこの選考の真の目的とは。

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大手広告代理店の最終選考は、戦争に導きたい政府側と、戦争反対を主張する
レジスタンス側のふた手に別れ、ゲームに参加する100人の一般市民から
最終的に支持を多く得た方が勝ち、というネットゲーム。

チームはそれぞれ異なる部屋に移動し、ゲームの中に入っている情報や画像を
入手し、掲示板にアップしていきます。また、告知タイムにはテレビの撮影機材を
用いて動画を撮影し、アップすることができます。

情報や画像は、自分たちが持っているポイント数から支払いしていきます。
政府側の方が持っているポイント数が多いのですが、レジスタンス側は
一般市民のフリをして掲示板に意見を書き込むことができます。つまり
自分たちに有利な意見を、市民が発言したかのように見せ、掲示板上に
アップすることができるのです。

と、このように一般市民100人を巻き込んだ壮大なプロパガンダ・ゲームが
行われます。市民に理解してもらうための主張、敵側を貶めるための表現、
効果的なアピール方法。さすが広告業界を目指しているだけあって、大学生
たちはあらゆる知恵を絞ります。

参加している学生も、国会議員のジュニアであったり、もとバックパッカー
であったり、正論をふりかざす真面目な人間だったりと個性豊かな面々。
最初は互いに牽制し合っていますが、チームとして勝利をあげるために
互いの主張を認め合い、作戦を練り、信頼関係を深めていきます。

ここで、鍵となるのが「スパイ」の存在です。互いのチームに一人ずつ存在し、
情報を流しているのです。それが誰であるかは終盤になるまでわかりません。
勝負はレジスタンスチームの優勢から始まり、ペースを掴んだ政府側が
巻き返しを図ります。その攻防に、仮想国家でありながら手に汗握る緊迫感に
満ちています。

それと同時に、ある違和感がずっと頭に張り付きます。
なるほど、こうやって市民の考えを煽動できるんだな、と。
物語だと思って、ゲームを進行させる立場で見ていますが、これが市民の
立場だったらどうだろう?現実の世界で、都合の良い部分を切り取った情報を
流されて、いかにもなコメントを聞いていたら…。

ネットに流れるコメントが、世の中の多くの人が感じている意見かもしれません。
ただ、それすらもコントロールされているのだとしたら。
内容に違いこそありますが、多かれ少なかれ、自分自身も作り手側の何かしらの意図に
操られている部分があるのではないでしょうか。

そうした事実に気づいた学生たちが選んだ道は、どんな道なのでしょうか。
新しく知った敵にに立ち向かおうとする若い力を、応援したくなります。

メディアのコントロールに流されることなく、一度立ち止まり、この情報の
作り手は、見るものにどう思わせたいのか、という事を考えさせてくれる
物語です。

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