ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

人々がそれを買う理由が、この一冊の中にある

読書人が集う『シミルボン』にて、インタビュー記事掲載!

https://shimirubon.jp/columns/1691046 

 

ヘンテコノミクス 行動経済学まんが 』の

イラストブックレビューです。

 

人は、なぜそれを買うのか。安いから。質がいいから。
そんなまっとうな理由だけで、人は行動しないのだ。
そこには、より人間的で、深い原理が横たわっている。
その原理を漫画で描き、わかりやすく、楽しく解説。

 

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日常生活における経済活動について、心理学を交えて分析するのが
行動経済学」です。いつもは選ばないランチを選んでしまったのはなぜ?
〇〇円以上の購入で送料無料!!という言葉につられて必要のないものまで買って
しまうのはなぜ?こうした日々の買い物や食事、その他の経済活動について
学術的に分析し、解説します。

これらの事例を説明するのは、ちょっと懐かしいタッチの漫画。
サザエさんのような世界観で楽しく行動経済学を学んで欲しい、という
思いが著者たちにあったようで、見事にそんなほのぼのとした雰囲気を
醸し出してるので、読み進めながら思わず含み笑いが出てしまいます。

事例としては、子どもが塀の壁に落書きするので困っていたおじいさんが、
ある時から子どもが落書きしたらおこづかいをあげることにしました。
何度かあげたあと、お金が無くなったからもうおこづかいはあげられない、
と伝えます。そうする子どもたちは塀の落書きをしなくなったのです。

子どもたちは、最初書くことが好きで落書きをしていたのですが、やがて
おこづかいをもらうため、と動機が変化していきます。そしておこづかいが
なくなると落書きをしなくなりました。

つまり、報酬により、動機が阻害されたのです。これが「アンダーマイニング
効果」と呼ばれるもの。かつてイチロー選手は2度ほど国民栄誉賞のオファーを
受けましたが、2度とも断っているそうです。賞という名誉(報酬)を得ることにより
野球へのモチベーションが下がるのを懸念して、とのこと。もしもいただけるので
あれば引退後に、と発言しています。さすが、一流アスリート。自分の動機を
明確にし、阻害するものを寄せ付けない強さと賢さを持ち合わせていますね。

ほかにも「あるある!」な事例が盛りだくさん!!
無意識に行なっていた「買おう!」「やっぱ買うのやめよう!」といった気持ちや
行動に対してこんな風に説明がつくのか、と驚きとともに、深く納得させられます。

消費者がお金を支払う時にはこんな心理が働いている、ということが身近な
ストーリーと親しみやすい漫画でわかりやすく解説してるので、売る側は
この心理を利用して販売しているのだな、買う側はここが刺激されてお金を
払うのだな、ということがよくわかります。

また余計なものを買ってしまった。ちょっと出費が増えてきたような?
そう思っている人はこの本を手にとってみると「こういうことだったのか!」と
多くの事に気づくかもしれません。買いすぎはありませんよ、という堅実な
あなたには、世の中はこうやって買って買わせて経済が回っているのだなあと
いう視点が得られる、どちらにしても楽しくて得るものの多い行動経済学漫画です。