ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「美食家」の世界は何とも奥深いのだ

多くの読書人が集う『シミルボン』に、インタビュー記事を掲載

していただきました!自己紹介や本好きになったきっかけ、

書評作成時に心がけていることなどをお答えしています。

よろしかったら見にきてください爆  笑

https://shimirubon.jp/columns/1691046 

 

巷の美食家 新装版 』の

イラストブックレビューです。

行動する作家、開高健が綴る、食と酒にまつわるエッセイ。 

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かの世界的有名なスパイが教える料理、東京と関西のうどんの違い、
ゲテモノ料理。キャビアやフォアグラが溢れる内容だ思ってページを
めくるととんでもありません。

開高氏は、あらゆる食べものに果敢にチャレンジしています。壮絶なのは、
ゲテ料理の章に出てくるセキフェなる食べ物。
どういった食べものかといえば

ブタの子宮を胎児ごとまるまるとりだし、包丁でトントンとタタキに
するのである。子宮、羊水、胎児、その肉、その骨、何もかもを
トントンとたたき、どんぶり鉢に入れて、ツルツルとすする。
すべて生のままであって、煮もせず、焼きもしないのである。

ぎえぇぇぇぇぇぇ。これはほんの序の口。
料理についての詳細な説明はまだまだ続きます。
読んでいるだけでなんだかムズムズしてきますが、著者は特に
気にしないようで、ツルツルと食べ、味は淡白であり、血生臭くもなく
油臭くもなく、なかなか上品である、と感想を述べています。スゴイ。

他にも中国の現地の人しか来ないような屋台で、欠けた丼に入った
お粥を食べたり、香港では生きた蛇の肝臓をえぐり出して茶碗酒で
飲んだりしても特に異常なしであることから、頑丈な胃腸お持ちなのかと
思いきや、都会の清潔な暮らしではお腹を壊すという。不思議な体質で
いらっしゃるようです。

お酒についても書かれています。ブルガリアで出されたスモモのブランデー、
『スリヴォ』、紳士の乳と呼ばれ、すごい威力を持つ『マスティカ』、
ロシアの『ズブロブカ』などなど。現地で飲んだ時の出来事や、その
酒や国の、文化・歴史を交えながら綴ります。ベロンベロンに酔っ払って
大笑いしながら飲んでいる著者の姿が目に浮かぶよう。楽しいです。

食や酒に関する雑学的な部分を知る楽しさと、著者の破天荒な行動、
それでいてちょっと冷めた自身への視線がバランスよく交わり、
絶妙なユーモアを醸し出しています。インターネットが普及し、
自宅にいながらあらゆる食や世界の情報を知ることができる現代
ですが、経験するということが、自分自身だけのものであり、そして
自分の意識や考え方をより広げてくれるものなのだ、ということを
感じさせてくれるエッセイです。