ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

いつまでも続いて欲しいと思う、二人の関係。

大家さんと僕 』の

イラストブックレビューです。

 

一階に大家のおばあさん。二階にトホホな芸人の僕(カラテカ 矢部)。
一緒に旅行するほど仲良くなった、不思議な『二人暮らし』の日々。

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お笑い芸人、カラテカの矢部さん。白くて細くて非力。
滑っちゃうこともよくあるけれど、テレビや舞台に体を張って
頑張っています。不動産屋の紹介で住むことになったのは、
一階に年老いた大家さんが住んでいる、完全二世帯住宅の二階部分。
そこで、不思議な二人の生活が始まります。

大家さんは87歳のおばあさま。『ごきげんよう』と挨拶をし、
家の周辺までも掃き清め、食事も作り、しっかりと自立している方です。
その大家さん。矢部さんが帰宅すると、矢部さんへ電話をかけてきます。
そして『おかえりなさい』と。雨が降ってはまた電話。『洗濯物を
取り込んだ方がいいですよ』。

最初は戸惑っていた矢部さんも、大家さんが心から彼を気遣っての
事だということを理解すると、次第に距離を縮めていきます。
大家さんのお宅でお茶をいただいたり、一緒に食事に行ったり。

矢部さんが、大家さんの佇まいをとても好意的に感じていることが
そこかしこに感じられます。年老いても自分自身軸をしっかりと持ち、
好奇心とウィットに富んだ会話をし、時には戦時中の出来事を語る。
お笑い芸人の矢部さんよりもおもしろい事を言ったりもします。
引き出しをたくさん持った、とても素敵な女性であることがわかります。

大人の男性としてはひ弱な矢部さんと、高齢である大家さん。
決して強くはない二人が、依存することなく、相手を思いやる
姿に胸が打たれます。二人の間に流れる、やさしくてゆっくりとした
時間は、読む者に大切なもの思い出させてくれるようです。
歳の離れた他人を敬い、大切に思う。そんな素敵な二人の関係が
いつまでも続いて欲しいと思うコミックでした。