ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

最高にメンドくさくて最高に頼りになるオバハン

最高のオバハン 中島ハルコの恋愛相談室 』の

イラストブックレビューです。

 

中島ハルコ、52歳。バツ2で女社長。
金は持っているけれど、ケチでとにかく口が悪い。
そんな彼女のもとにはなぜか悩みを抱えた人間がやってくる。
恋愛、夢、親子関係に定年した旦那…。あらゆる相談事に
自分の揺るぎない軸で持って、バッサバッサと切り倒す!
痛快オバハン物語。

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フードライター、菊池いづみは自腹で泊まる事になって
しまったパリの高級ホテルのロビーを歩いていました。
ホテルの朝食は高いので、外の安くて美味しいお店に行こうと
思っていたのです。そこへ日本人の女性から声をかけられます。

その日本人のオバハンは、ここの朝ごはんは高いわよねぇ、と狎れ狎れしく
いづみに話しかけます。これから朝食を外に食べにいくのだ、という
いづみに便乗して同じ店へと向かいます。
このグイグイいく感じがもう何か起こるよねぇ、というワクワク感を
醸し出しています。朝食を食べながらハルコの自身語りがはじまります。
美容、ファッションを扱うIT関係の社長をしていて、次から次へと出てくる
彼女の自慢話に、いづみは辟易しながらも、裏表ないその口調に、つい
自分の悩みを話してしまいます。

長年続いている不倫相手にお金を貸して欲しい、と頼まれたいづみは
彼に300万円を貸し、それから1年になりますがお金は戻ってこないし
会う回数も減ってきたのです。騙されたのでしょうか・・・?
そんないづみに、相手にキチンとした書式の請求書を出せ、返せなければ
マチ金から借りてでも返せと言え、とアドバイスします。

実践したところ、なんと彼にはもう一人別の女がいて、その女のために
金を借りたとのこと。そして奥さんに泣きつき、奥さんが現金を
いづみのもとへ持参したのです。奥さんを目の前にしたいづみは、
急速に彼への気持ちが冷めていくのを実感します。
奥さんもこんな程度なんだ、と感じて、あの男も大したことないのだ、
と自分の中で納得するわけです。

こうして、ハルコの助言により長年の不倫を解消することができた
いづみは、たびたびハルコと組んで食事をしたり、仕事をしたりするように
なります。その先でハルコに相談を持ちかけるのは、今をときめく
投資会社の若手社長、独身女性編集者、女学校時代の同級生、
有名料理店の主婦など、あらゆるジャンルの老若男女。

それを、ハルコの常識でもってガンガンアドバイスしていきます。
愛人を持つ社長には

大貫、愛人がね、こっちの懐を考え出してケチになったら要注意よ。
自分の取り分をちゃんと考え始めてんの。普通愛人っていうのは
そうじゃない。短期決戦と思ってるから、いろいろ金を遣わせる。
だけどね、将来をちゃんと考えてる女は怖いわよねえ。

と愛人によって身を持ち崩しそうな彼にキツイ一撃をくらわします。
こうやって包囲網を詰めていく女もいるってことですね。怖い怖い。

また、40近くになり、結婚を真剣に考えようと相談所に入会し、
気の合う相手も見つかり親に紹介したら、反対されたという
独身女性に対しては、親から逃げろ、と忠告します。

いい、人っていうのは、親のめんどうをみるために生まれてきたんじゃ
ないのよ。自分の人生を生きるために生まれてきたのよ。

いいこと言いますね。今どきの親子の関係は、こうしてがんじがらめに
なってお互いにほどけないパターンが案外多いのではないでしょうか。
親元から逃げるタイミングを失った人にはとても響くセリフです。

このように歯にもの期せぬ物言いで痛快に問題を斬ってくれます。
一昔前の価値観も入っている部分はありますが、人として大切なこと、
という部分はしっかりと心の奥にあることがよく伝わります。
こんな血の気が多い、パワフルな人間は今の時代には珍重される
タイプだと思います。実際、近くにいたらうるさそう(笑)。
でもなんだか引き寄せられてしまう、最高にめんどくさいけれども
最高に魅力的な、頼れるオバハンの物語です。