ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

自分の生き方を決定できるのは自分だけだ

漫画君たちはどう生きるか』の

イラストブックレビューです。

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか


 

 

勇気、いじめ、貧困、格差、教養。
人間としてどうあるべきか、どう生きるべきかを考え続ける
コペル君と叔父さん。1937年に出版されて以来、ロングセラーと
なっている名著をマンガ化。

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父親を亡くし、母親と二人暮らしの少年、コペル君。
母親の弟で目下失業中の、元編集者である叔父さん。
自分と、自分を取り巻く人、世の中の存在を意識し始めた
コペル君は、様々な疑問を抱きます。

本書は学校や、それ以外の場所で起こった出来事をマンガで解説し、
その出来事について、叔父さんがノートに意見を綴ります。
この意見の部分が10~20ページ程度の文章となります。

友達の家が貧しかったこと。ケンカで相手に負けないためにナポレオンの
話を読んでみたいこと。殴られている友達を見て、仲間では
ないふりをしてしまったこと。

おじさんは時に広い視野から、時に自分自身の内面を見つめるように
促しながら、コペル君に助言をします。
それはコペル君の疑問とする部分を補うものです。コペル君の
見たものはコペル君だけのもの。だから、結論を決めときも本人が
決めるしかない、と言うのです。

叔父さんはコペル君の感性やものの見方を認め、1人の立派な人間として
誠意を持って接しています。中学生とはいえ、コペル君が自分の力で
物事を考え、解決していこうと思う意欲は、そんな風に叔父さんが
接してくれるからなのかもしれません。

友達の家を訪れたら、貧乏だった。殴られる友達を見ても
怖くて知らんふりをしてしまった。
自分が同じ状況になったらどうするか。咄嗟には判断がつきません。
自分が見てきたもの、感じるものに従って自分で決め、行動するしか
ないのです。

自分という存在と他者、社会とその関係。
その認識を明確にしたうえで、自分のなすべき事を知る。
それは自分がどうありたいのか、どう生きるのか、ということに
繋がっていくのです。

大勢の中に埋もれ、自身を見出せず不安を感じる10代にとっては、自分自身を
客観的に見つめ、世の中に対して自分は何をしていくべきなのかを
考えるきっかけとなる本であると思います。
彼らの先輩や親となる世代にとっては、自分たちの生き方を今一度
振り返り、後進の者たちに生きることについて、何を、どのように
伝えていくのかを考えさせてくれる一冊になるのです。