ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

勉強とは何かを得るのではなく喪失することだ

勉強の哲学 来たるべきバカのために 』の

イラストブックレビューです。

勉強の哲学 来たるべきバカのために

勉強の哲学 来たるべきバカのために


 

 

人生の根底に革命を起こす深い勉強、その原理実践を解説。
勉強とは、これまでの自分を失って、変身することである。
しかし、人は変身を恐れているから勉強を恐れているのだ。
独学で勉強するための方法論を追求した本格的勉強論。

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勉強を哲学的に捉えるとどうなるか?
新進気鋭の哲学者が、言語と人間との関係から見た勉強、そして
それらの検証を経た上での勉強論を展開します。

勉強をしていくと、「言語偏重」が訪れるのだそうです。
これは多くの情報を取り入れた結果、その分野の言語が増え、
今までとは違った言葉の使い方をするようになるため。
そこで生まれる違和感は、これまで自分がいた範囲をまたいで、
次の範囲へと移動しようとしているが故に感じるものなのです。

言語は自分や他人(又は物)を明確にするものでありますが、
それと同時に自分を縛り付けるものでもあり、逆に自由にする
こともできるものです。この言語を、ツッコミ(アイロニー)、
ボケ(ユーモア)、さらに意味さえも持たなくなる使い方(ナンセンス)と
分類し、言葉の呪縛に浸ったり解放されたりしながら、自分の知的認識範囲を
行ったり来たりすることが勉強なのです。

深く勉強すると、1つの考え方を掘り下げていくために他を認めないのは
アイロニー」、枝葉的に目を向けて広げていけば全く違う観点から発言する
「ユーモア」、意味はないが自分の根底に響く詩などの言葉は「ナンセンス」、
と表現してみるとわかりやすいかもしれません。

そして、勉強するには有限化が必要だと著者は言います。
まあ、確かに一点集中で深く掘り下げるにしても、途中でめぐりあう情報を
取り入れて横に広がっていくにしても、追求に終わりはありません。
どこかで線引きをする必要があります。
それには決断ではなく中断する。そしてまた戻ってくる。
やはり行ったり来たりするのが勉強のようです。
限界を決めて、一点集中したり、視点を広げてみたりしながら
思考の形を整えていく。それが学ぶ、ということにつながっていくのでしょう。

勉強法については、まずは入門書を数種類読み較べるところから始めること。
そしてノートに記録していくこと。それを写真に撮って、Evernote
One Noteなどのアプリに保存し、整理していく、などの手法が挙げられています。
ジャンルをまたがった部分からも新しい発見に繋がっていくことがあるそうです。

それぞれの項目について挙げられている例がおもしろくて、楽しく
読み進められるように工夫がなされています。
砕けた口調で身近な事例を使った論文、といった雰囲気ですが、最後まで飽きることなく
読み進めることができます。東大と京大でよく読まれている本、という
ところも興味深いですね。

今勉強をしている方、これから勉強をはじめようと思っている方。
勉強という概念を、これまでと違った角度で眺めてみてはいかがでしょうか。
あなたの根本を揺るがし、違う世界へと誘ってくれる一冊となるかも
しれませんよ。