ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

逃げろ!そして追え!もうひとりの自分を。

迫りくる自分 』の

イラストブックレビューです。

 

総武線で隣を並走する電車に乗っていた、自分に瓜二つの男。
後日その男と再会した俺は、気づけば犯罪者にされていた。
顔が似ている事で周到に仕組まれた冤罪。あいつの正体は?
目的は?日常を奪われた俺の必死の逃走劇が始まる。

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身に覚えのない婦女暴行の罪で、任意同行を求められた俺、
本田理司。自分は絶対にやっていない!
そういえば数日前に会った、自分にそっくりなあの男と
会話を交わしてからおかしなことが続いていた。
本当の犯人はあいつなのでは。

警察に説明するも、取り合う様子もない。
これでは、説明してもしらばっくれているか、冗談を言っているとしか
取られないだろう。すると自分は、自分によく似た顔の他人の罪を
かぶることになる。そして、別に犯人がいることを証明するのは
不可能に近い。

追い詰められた本田は、アパートの2階から、ダイハードよろしく
窓を突き破って飛び出します。そこからビルの裏手から階段を上り、
アクション映画のようにビルからビルへと飛びうつるのです。
普段から体を鍛えているわけでもない一介のサラリーマンが
よくもまあこんなに動き回れるものです。

逃げながらも、周囲に目を配り、警官がやってくる方向を予測し、
トラックの荷台に飛び降り、そのトラックが走り出したために
その場は何とか切り抜けます。しかし、トラックに積んでいたのは
有刺鉄線。左足の太ももに傷を負います。

公園の公衆便所、100円ショップで変装と傷の手当てに必要な買い物、
ネットでニュースを確認する以外は極力携帯の電源を切り、自分の位置を
確定させないようにする…などなど逃走についての情報が満載で、何かの
時には参考になるかも?警察に追い詰められている状況で、しかも満身創痍。
よくこんなに頭がまわるものだよなあ、と感心します。

しかし、怒りすぎると頭がしんとしてつめたくなることもあります。
または警察に追い回されている犯罪者、というレッテルが貼られた事に
より、最底辺に落ちたのだから、あとはあがるだけだ、と腹をくくったの
かもしれません。ですから、ケガをしていても、警察の手がすぐそばに
来ていても、ヤクザを利用してでも、自分を罪に陥れた犯人を捕らえるのだ、
ということを支えにして立っていることができたのでしょう。

主人公が、もとは客先にも会社にも信望の厚い、穏やかな人間であることも
この話をよりいっそうおもしろくしています。真面目な人間を怒らせると
どうなるか、といった観点からも楽しめるかも。何せ、最初の頃とラストの
あたりの本田の描写は、姿も言動も別人のようになっていますから。

自分を冤罪に陥れた犯人を、本田が追い詰めるクライマックスは、手に汗握ります。
最後の最後まで気を抜くことができません。まさにハラハラドキドキの
エンタテイメント小説。知らないところで知らないうちに傷付けていた誰かが
あなたの元に復讐にやってくるかもしれませんよ。