ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

活字と本とGoogleが描く未来とは

ペナンブラ氏の24時間書店』の

イラストブックレビューです。

ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫)

ペナンブラ氏の24時間書店 (創元推理文庫)

 

 

ふとしたきっかけで働くことになったミスターペナンブラの
二十四時間書店は変わった店だった。
天井までもある本棚にぎっしりと詰まった本たち。
その中には暗号で書かれていて判読不明なものが多数ある。
それを解読するため、友人たちの力を借りて挑んでいく。

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二十四時間営業の書店と、店長の老人。
暗号で書かれた謎の本。
ワクワクする要素が満載の本書。おまけにスカイエマが表紙では
反射的に手に取ってしまうというものです。
スカイエマ大好きです。

この作品は、モチーフが非常に魅力的なのですが、翻訳本のせいか
言い回しがまだるっこしいこともあったり、Googleがものすごく
全能感ある表現だったりしたので、個人的にはなかなか読み進める
ことができませんでした。

500年も前からある書籍、使われているフォントに隠された謎を
解く。そのためには現代の最先端の方法を知る若者とその友人、
それから謎を解き明かすべきではないという古い因習を破ろうと
している書店の主人が、全力で謎解きに挑みます。

Googleの、できなことはないというスタンス(失敗に終わりますが)は
マッドサイエンティストじみていて、逆におもしろくもあります。
ていうか、Googleで何でもわかっちゃったら生きていく楽しみが
なくなってしまうと思うのですがどうでしょう?

書店の店長のペナンブラが何を目指してどうしたいのか、というのも
いまいち伝わりづらかったかなあ、という印象です。
彼の過去のエピソードもう少し増やして、その人となりの肉付けを
より厚くした方が、彼の行動に納得がいったのではないかと思います。

後半、謎に近づいていく過程においては、興味深い描写も出てきます。
鍵となるフォントの原型を保存している施設の様子がなかなかおもしろい。
さまざまな物が時代を経てどのように価値を変え、そして扱われていくのか。
その価値の意味すら不明になっていくときにはどうしたらいいのか。
施設の描写や、主人公の気持ちの描写には考えさせられる部分があります。

500年も前からの印刷にまつわる技術への思い、本に寄せる思い入れ、
本からもらった謎解き冒険への情熱。そんなことを教えてくれる物語です。
さらっとと読むにはあまり適していないかも。
これからはじまる秋の夜長にじっくりと腰を据えて読めば、
活字と本とGoogleが描く新しい未来を見つけることができるかもしれません。