ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

自分と世の中を客観的に見るヒント

こころ彩る徒然草 

兼好さんと、お茶をいっぷく 』の

イラストブックレビューです。

こころ彩る徒然草 ~兼好さんと、お茶をいっぷく

こころ彩る徒然草 ~兼好さんと、お茶をいっぷく

 

 

徒然草二百四十四段の中から六十六選び、現代の私たちに
語りかけるよう、わかりやすく意訳。

f:id:nukoco:20180421105540j:plain

徒然草は、鎌倉時代に書かれた吉田兼好によるエッセイ。
鎌倉時代といえば疫病が流行ったり、飢饉が起きたり、戦国時代へ突入したりと
誰もが明日はどうなるかわからないという大変な時代でした。
そこで出てくる無常観は絶望や諦めにも似た暗いイメージを伴うものです。

しかし、その中でもこの徒然草はそうした暗いイメージはありません。
世の中を一歩離れた位置から眺めることで、見えていなかった物を
見つける喜びや、人の心の機微ですら、いっときの事であるから
縛られるのは馬鹿らしいよ、もっと気楽に生きましょうよ、と言っています。
物事や自然現象、人の心は常に同じではない、だから苦しい時もあるけれど
ずっと苦しみ続けることもない、と同じ無常観でも前向きな印象です。

この徒然草の中から、鎌倉時代に限らず、現代にも響く内容を選んで意訳しているのが
本書です。例えば「勝負に勝つ秘訣は勝とうと思わないこと」
「上達する人としない人の違い」「人生の目的を果たすためにどうでもいいものは
キッパリと捨てて急いで行動すべき」「失敗しないためには…」など
自己啓発的要素もたっぷりとつまっています。
また、「今生きているこの喜びを日々楽しもう」といった
スピリチュアルな要素もあります。

人間の本質は意外と変わらないもんだなぁと思いつつ、
自己啓発的、スピリチュアル的、道徳的など多角的な目線から
なるほどと頷いたり、時には愚かな行為や人に対してちょっぴりシニカルな
物言いをしてみたり、わかりやすくおもしろく物事を書ける吉田兼好という人は
大したものだなあと改めて感心してしまいます。というか、
吉田兼好が直接語りかけてくれているような、この意訳の効果が大きいのかも。

法話の要素も含んでいるかとは思いますが、生きる事に困難や辛さを感じて
いる人には染み込んでいく内容なのではないでしょうか。
物事にとらわれすぎず、一歩引いて眺めてみる。
そうすることで思いがけず新たな発見ができるかもしれません。

法事の席でお坊さんから一言、またはお年寄りから聞くお話。
そんな、「そうかぁ」と思ってしまう、素直に頭と心に入る、
ちょっぴり楽に生きていくためのヒントがつまった一冊です。