『平面いぬ。』の
イラストブックレビューです。
- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/06/01
- メディア: 文庫
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私は腕に犬を飼っている。
ひょんな事から居着いてしまった平面いぬポッキーと
少女の不思議な生活ほか、ファンタジー、ホラー四編を
収録した乙一の短編集。
ほんのできごごろで腕に彫ってもらった犬の刺青がある日突然動き出したのです。
勉強もスポーツもいまひとつ。日常生活もきちんとできない
女子高生のユウ。親友の山田さんに勧められて犬の刺青を彫ります。
すると、なぜかその犬が動きだします。
いつの間にか腕から腰や足などあちこちに移動しているのです。
吠えることもあります。食事をします。ユウのホクロやできものを食べます。
肉の絵の刺青を彫ってやるとそれを食べるのでいつの間にか、肉の絵の刺青は
消えているのです!
なんという不思議な発想。
この事実をすんなりと受け入れてしまうユウは、ある日父、母、弟が全員ガンに
かかり、三人ともが余命半年であることを知ります。
呆然とし、三人の結束力に疎外感を感じ、弟や家族に対しての劣等感を再燃させます。
自分だけが生き残り、1人で生きていくことを自覚した時に深く絶望するユウ。
自分だけでも生きていけるのか自信がないのに、イヌの刺青の面倒を見ながら共に
暮らしていくことなんてできない…。
家族を失うと実感したことで、「生きていく」という事をハッキリと理解したのです。
不思議な設定であり、また自分以外の家族が全員余命半年など重い状況でありながら、
刺青イヌのちょっとおバカなカンジと友人や家族との一歩引いたやりとりが、物語を
暗くさせることなく、でも少しのせつなさを伴って、読ませてくれます。
背景の描写や主人公の愚かさが、外側から冷たく美しく、そして丁寧に描かれており、
引き込まれていく物語です。