ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「食」とは文化であり芸術であり、楽しむもの

グルメの教養 「食の子ども」から「食のおとな」へ』の

イラストブックレビューです。

グルメの教養「食の子ども」から「食のおとな」へ

グルメの教養「食の子ども」から「食のおとな」へ

 

作る人も食べる人もこれだけは知っておきたい座ったままの料理学。
料理をすることが楽しくなる、食べることが楽しくなる、
おもてなしに自信がつく。そんなトピックが満載。

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結婚を控えた姪に語りかける口調で、料理の文化や歴史、食にまつわる
良書やおもてなし料理の考え方までくだけた口調で解説してくれます。

フランス人は何故あんなに食にうるさいのか。
和食が世界で高評価を得ているのはなぜか。
ガストロノミーとは何か。
そんな疑問を、順を追ってわかりやすく説明します。

フランスにおける食のこだわりの強さには驚きます。
フランスのある政治家は、ナポレオン没落後の国会体制を話し合う会議にも
料理を用意しました。それも、メニューと飾り付けに相手の心理を考え贅を
こらし、食材選びからメニューまで細かく指示を出したのだとか。

生活の一部に食事があるのではなく、食事が時として時代を作るほどの力を
持っている、そう当時の権力者は考えたのでしょう。
そうして吟味され心を 尽くして出された料理には、交渉相手の心をガッチリと
掴んだに違いありません。

また1970年代にフランスで起こった「ヌーベル・キュイジーヌ」についても
触れています。言葉自体は聞いたことがありましたが意味は全く知りませんでした。
これは、古臭い従来のフランス料理と決別し、料理の新時代を告げる、という
フランスで巻き起こった動きを指します。

具体的には、調理時間の短縮、素材を見直し新鮮さを重視、メニュー品数の減少など。
それまで伝統的かつ高級であったフランス料理の概念を変える、多様的で新しい、
身近に楽しめるものとして料理を提供したようです。
代表的な料理人としてはポールボキューズ、トロワグロ兄弟など。
どちらも東京 へ出店しています。知らずに利用していましたが、これらの知識を得た
うえで訪れていれば、料理をより楽しめたのだろうなと思います。

ほかに、おもしろいなと思ったのは「和食」。
フランス料理・中華料理などは素材に火を通し、様々な味を加えたものが料理として
認識されるのに対し、日本料理は素材を重視し、なるべく自然の姿、味を最大限保持
しようとするため、加熱などの調理も最低限に留めています。

これは、綺麗な水が豊富にあったことも関係していますが、濃い味を重ねていっても
おいしくならない、という考え方が根底にあったようです。外国では、料理は味を
足していくのに対し、日本の場合は味を引いていく、といったところでしょうか。

外国では、料理人のことを調理する人、と言いますが、日本料理では板前、と言います。
火を入れ調理することよりも、素材の扱いや時には生で食することもある素材をどう切るか、こちらに重きを置いているためにこうした呼び方になるのだと思います。

ほか、日本人は食に対して視覚、嗅覚のほか触覚についてもこだわりがあるということ。これもはじめて知りました。
言われてみれば確かに、コリコリした歯ごたえ、シコシコとしてコシが強いなど、
硬い、やわらかい、むちむち、ねっとりなど食感に対しての表現は山のようにあります。こうした特性からも、素材の切り方で食感が変わってくるため、やはり包丁使いがポイントとなり、板前さんが大事な立場であることも理解できます。

食についての知識を広げていくことで、外食が楽しくなり、また自分で作ることも
楽しくなる思います。
国が違えば素材も変わる、調理方法も変わる、そして魅せ方も。
なぜそうなるのか背景を知れば、食べること、作ることがもっと好きになれるのでは
ないでしょうか。

美味しい料理をただおいしい食べるだけではなくて、その背後にある歴史や文化に思いを馳せることで、その一皿がさらに輝きを増すでしょう。
この本を読んで、改めてフランスという国が持つ料理への思いが素晴らしいなと
感じましたし、日本の料理についても世界で評価されるに値する理由がそこかしこにあるんだなと思い、嬉しい気持ちになりました。
作る人食べるだけの人、どちらが読んでも楽しく身になる本だと思います。