ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

何のために勉強するの?答えを探しているあなたに。

手紙屋 蛍雪篇(私の受験勉強を変えた十通の手紙)』の

イラストブックレビューです。

    

手紙屋 蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜

手紙屋 蛍雪篇〜私の受験勉強を変えた十通の手紙〜

 

 高校2年生の和花は、部活や友達づきあいに
明け暮れる毎日。そろそろ進路を決める時期となった。
大学に行きたいけれど、成績が足りない。
勉強しなくては、と思うけどやる気が出ない。
そんな和花に、兄の喜多朗が紹介してくれたのは
謎の人物、手紙屋だった。

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正体のわからない手紙屋と文通をはじめる和花。
自分の気持ちを正直に綴ります。
大学に行きたい思っていること。
でも行きたい理由は今ひとつハッキリしないこと。
そのせいか、勉強することに意味を感じることができす、
やる気がおきないこと。
そんな自分に嫌気がさしていること。

自分の高校時代も、和花に近い感覚だったと思います。
何を学ぶために進学するのか。
そこは突き詰めずに、得意科目で入れるところ…という
感覚で受験に臨んでいました。
受験の時点で目的意識をハッキリと持って取り組む人間は
自分の周囲にはあまりいなかったように思います。
とりあえず、行けるところに行く派が多かったですね。

和花は、自分の行くべき道がハッキリと決められない自分を
腹立たしく思っています。
それは、彼女が真剣に自分の将来を考えはじめたからだと思います。
現状のまま、流されていく方向は、おもしろくも何ともない
日常が待っている…
そうやって将来の自分を想像する、できること自体が
素晴らしいと思います。
自分の十代の頃は、部活や友人関係など、日々楽しく過ごすのに
忙しくて将来のことなど考ることも思いつかなかったですから。

手紙屋から和花へ宛てたアドバイス
○勉強は道具であること。
○学校で習うものだけが勉強ではないこと。
○自分が生きる意味は自分で作れること。・・・など。

よく聞く言葉ではありますが、具体的な例を使って
とてもわかりやすく説明してくれます。
勉強は道具であるが、道具をもっているだけでは役に立たない。
使い方を誤ると、人を傷つけることもある。
正しく使ってこそ、役に立つものになる。
なるほど、と思いました。

そして、日々過ごす毎日の中に学ぶことはある、ということ。
スポーツはじめれば技術の向上はもちろん、ルールも
学ぶ必要があります。
就職すれば仕事の内容、取引先の情報、ビジネスマナーなどを
身につけなければなりません。
料理をするならば材料の扱い方、調理の方法なども知らなければ
上手に作ることは難しい。

何も受験のためだけに勉強が必要なわけではないのです。
受験勉強で培った忍耐力で、ハードな仕事も乗り越えられるように
なるかもしれません。スポーツで学んだチームワークが、
プロジェクト進行に役立つかもしれません。
何がどうつながっていくか分からないからこそ、自分に勉強は
必要ない!とは言えないわけです。

自分が選んで進む道に迷いが生じることがあるかもしれません。
しかし、一度決めたら良かったかどうかは問題ではなく、
まずは完成させてしまうことが大切。
そして、1つの意味を手に入れた後に、また別の何かを
手に入れていけばいい。

と手紙屋は言います。
根が飽きっぽい私には突き刺さる言葉です。
何かをやりかけてはあちらの方が良さそうだ、とひょいひょい
乗り換えて、中途半端になってしまうこともしばしばありました。
この言葉、学生時代に聞いていたら、だいぶ違ったかな、と
思います。

逆に、大人になった今に聞いたからこそ、深く沁みているのだとも
思うのです。小さなことですが、読みかけた本は時間がかかって
最後まで読むこと。
書き始めた書評は必ず最後まで書ききること。
そうやって続けることで得たものが確かにあります。

自分にとって勉強とは、身につけていくもの。得るもの。
使うもの。他人の気持ちやいろんな世界を知り、想像力を
養い、人の気持ちに寄り添ったり、元気をあげたりすることが
できるもの。そんな結論を出しました。

いまでも勉強、と聞くと「ううっ」とアレルギー反応が少々
出てきたりもしますが、そのイメージを取っ払って、自分の栄養として
どんどん取り入れるものだと考えればやる気も出るというもの。
我が家の子供達も順次受験となります。
そんな時に、少し先の、輝く自分を手に入れるための手段として
勉強に取り組んでいってくれたらいいなと思います。

我が家は本が溢れていますが、子どもは自分の読みたい本を勝手に読むため
親が勧める本はだいたい読みません。
なので、本棚の目につく位置に差しておこうと思います。
受験まであと数年。ぜひその前に手に取ってくれますように。