ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

いざ!達人たちの仕事場へ

仕事場のちょっと奥までよろしいですか?』の

イラストブックレビューです。

   

 

仕事場のちょっと奥までよろしいですか?

仕事場のちょっと奥までよろしいですか?

 

 花火職人や伝統工芸の職人さんから、作家・伊坂幸太郎さんに
漫画家・いがらしみきおさんなど、作ることのプロ15名の
仕事術をイラストでルポ。

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著者、佐藤ジュンコさんは、ゆるいイラストがかわいらしい、
もと書店員の経歴を持つ、仙台在住のイラストレーターさん。
この佐藤さんが、作ることのプロの仕事場へお邪魔して
その仕事ぶりを取材します。

やはり目を惹くのは作家の伊坂幸太郎さんでしょうか。
多くの作品が映画化されたりドラマ化されたりと、
今をときめく人気の作家さんです。
伊坂さんは原稿は専ら出かけ先で書くそうです。
1日に2〜3軒寄って、午前中5ページ、午後5ページといった
ペースで書かれているとか。
ふと立ち寄った喫茶店に伊坂さんがいたらびっくりしますね。
サインもらいたいです。

作品を書く他には資料を読んだり、編集者と打ち合わせを
したり。書き下ろしで単行本を出す場合には、完成品ではなく
半分まで書いたもので、編集者と打ち合わせをするのだとか。
話しているうちに良いアイデアが出たりするそうで。
なるほどですね。自分の書いた作品にいい意味でこだわり過ぎす
良い物を作り上げて行こうという柔軟性があるのですね。

一冊書き上げるのにかかった時間は最短で4ヶ月、最長で3年。
途中で書くことをやめた小説はないんですって!
すごい!どんな作品でも、とちゅうでやめることなく、
納得のいく形に変化させながら作り上げていくのでしょうね。
これも柔軟性があるとともに、やめないで続ける、という
強い意志も併せ持っているのでしょう。

それから、こけし工人の小笠原義雄さんの取材もおもしろいです。
小笠原さんはこけし界の重鎮!数々の賞を取られているそうです。
こけしを作るには、木地挽く木地師の技術、こけしを作るノミなどの
道具をオリジナルに作り変える鍛治師でもあり。
そして顔や身体も描きますから絵師でもあります。
さまざまな技術が必要なんですね。

小笠原さん本人はエラそうなことなく気さくな方だそうで
仕事中、木の中からたまに虫が出てくると、ストーブであぶって
パクッと食べた、とか、ご近所さんが集まってきたり、
お弟子さんも著者の佐藤さんもみんな一緒に奥様が作ってくれた
お昼ご飯を食べたりと、ほのぼのエピソードがたっぷり。

小笠原さんのこけしに対する愛情が、周囲のみんなに
伝わって、笑顔が溢れているようで素敵だなあと思いました。
やはり、こけしの良い表情を描くには、作る者の心構えが
大事なのかもしれませんね。

そのほかにも花火職人、染物屋、伝統工芸の玉虫塗りなど
昔から続いているものには、それだけの理由と努力があります。
それと、みなさん伝統を守りつつ、作品の新しい可能性を探り、
チャレンジを続けているのです。
それが現代まで長く続く理由のひとつかもしれません。

現代の職業では漫画家、グラフィックデザイナー、
鳥瞰図絵師、印章彫刻マイスター、ステンドグラス作家など
はじめて知るような職業もあります。

その職業もみなさん好きで、ひたすらやってます!
という空気がびんびん伝わってきて何だか元気になります。
佐藤さんのゆるいイラストがまた、作る人々をやわらかく
でもひたむきに取り組み続けるみなさんをあたたかく描いています。
ものづくりをする人もしない人も。
仕事に取り組む姿勢、仕事ってなんだろう。
そんなことのヒントがつまった、イラストエッセイです。