ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

55作品のうちのベスト5はどれにする?

うれしい悲鳴をあげてくれ』の

イラストブックレビューです。

 

 バンドのギタリストとして活躍し、バンドの解散後は
作詞家、音楽プロデューサーとして数多くの楽曲を
手がけるいしわたり 淳治さんの短編小説&エッセイ集。

f:id:nukoco:20180126144620j:plain

   

この頃のちくま文庫はすごいです。
どれも帯が素晴らしい。
帯の文句に惹かれて購入した文庫本は10冊近くに
なるかもしれません。
こちらもそんな帯の文句に誘われて手に取った1冊です。
『この本を楽しめないなら他にオススメはありません!』
強気ですね。
出版社出身としては「おう!じゃ読ませてもらうよ!」
と臨戦態勢です(笑)。

ひとつひとつの作品がとても短く、数分で読めます。
文庫本でありながら、その収録数はなんと55編!
音楽雑誌で連載されていたものをまとめて、文庫化
したようです。それならば1つのお話の短さに納得
できます。

小説部分の内容は、ショートショートというか
ブラックユーモア的なものが多いです。
すこしシニカルな目線で、人の愚かなところを突いてくる
ような雰囲気。
短いページで結末が予想できてしまうのは仕方がないの
ですが、登場人物のセリフや心情を表す言葉にパンチが
足りないというか、印象に残りにくかった感があります。

続いてエッセイです。
ちょっとなんだこれ?という感想を持ってしまうものも
いくつかありますが(笑)、個人的にはこちらのほうが
著者の人間性が見えて、好感が持てました。
等身大の著者が、感じたままに素直に発する言葉は
読むものの心にもストンと落ちます。
そして、ミュージシャンも結構普通の人なんだな、と
安心感を得ることができます。

帯にはこんな文章もあります。
「読後、ニヤッとしたり、ゾッとしたり、キュンとしたり、
スーッとしたり、5分に一度やってくる爽快感が
たまりません!」
・・・残念ながら私にはその感覚が訪れませんでした。

その代わり、ショートショートというのは奥が深いんだな
ということを改めて感じました。
以前フレドリック ブラウンの『さあ、気ちがいになりなさい』
という本のレビューを書きましたが
https://shimirubon.jp/reviews/1675972

こちら、短い話なのにものすごい要素がぎゅぎゅっと
詰まっているのです。
いろんな表現がある中から言葉を選んで出している。
読んだ後はそれこそひんやりしたり、妙な気分に
なったり、ああ、今に生きてて良かったよと思ったり。
そんな風に感じる作品ばかりです。

限られたページの中で、どのように伝えるかというのは
まさに作家の腕の見せ所と言えると思います。
いしわたりさんは、音楽をされる方なので、1曲の歌を
作るように小説やエッセイを書かれているのかも
しれません。

小説などをよく読まれている方にはひょっとすると
物足りない内容かもしれません。
しかし、普段本を読むことがない方、読む時間が
ない方などは気軽に読むことができて良いのでは
ないでしょうか。

次に手に取るちくま文庫はどんな帯なのか。
そして本の内容にふさわしいコピーが書かれて
いるのか。本探しの旅に新しい楽しみが加わりました。