ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

何かを残そうとする行動、それが人間が存在する意義だ

優しい死神の飼い方』の

イラストブックレビューです。

 

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

優しい死神の飼い方 (光文社文庫)

 

 犬の姿を借り、地上のホスピスに派遣された死神のレオ。
患者たちの未練を解き放ち、魂をわが主様に送り届ける
のが仕事。しかし、それには過去にこの地で起きた迷宮入りの
事件を解決せねばならなかったのです。

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ホスピスにいる患者たちは、余命が迫っています。
ところが彼らはこの世に未練を残しています。
戦時中の悲恋。洋館で起きた殺人事件。
色彩を失った画家。

彼らは人に裏切られ、あるいは人を殺し、感じていない
痛みに日々のたうちまわっています。
ホスピスで看護師として働く菜穂に面倒を見てもらうことになった
レオは、病室へ忍び込み、患者たちの夢の中へと入り込みます。

そして、過去に起こった心のしこりの原因を、改めて
本人たちに見せます。レオは、第三者だからこそ見える新事実を
彼らに突きつけます。

昔の好きな人に裏切られたのは、本当は自分を守るためだった。
人を殺したのは自分ではなかった。
自分の絵がなかったのは大切にしまわれていたからだった。
レオは新事実を提示しただけでは終わりません。
心にかかる疑念は解決したかもしれませんが、関係する相手はすでに
亡くなっていてこの世にいなかったりします。
おまけに何かしようにも自分の命は先が見えているのです。

そのうえでレオは言います。
これからどうするのかはお前自身が決めろ。

問題がなくなった。はい、終わり、ではなく、
問題が解決した、そのお前はこれから何をするんだ?
どうやって生きていくんだ?
と投げかけます。

時間がないとか、これでいいのかとか、そんなことは
関係ない。患者たちが決めたことに対してレオは
「それでいいんじゃないか。お前が決めたことなら。」
と一言述べます。
自分のどうしようもない後悔や懺悔の気持ちに対して
投げかけられた一言は、あたたかな感謝の気持ち、
許しを超えたその先のものを感じさせてくれます。
神様が見守ってくれているような感覚でしょうか。

患者たちの未練がスッキリしたところで、最後のヤマが
訪れます。過去にこの建物に侵入し、殺人事件を起こした
犯人が、また仲間を伴って隠されている宝石を取り戻そうと
やってきたのです。

未練がなくなった患者たちは、頼りない自分の身体を
必至に動かし、囚われた者を助けようと活躍します。
かつては自分など死んでも仕方がない、そして、他人の
事などまったく興味がない、と思っていた患者が
他人を守り、そしてそのためには命を失っても構わない、
という覚悟をするまでに、気持ちが変化していることに
胸がギュッと掴まれたような、そんな気持ちになります。

死期がわかっている患者たちのお話です。
しかし、死を迎えるのをただ待つ、という暗い雰囲気はありません。
レオの上から目線の語りと、犬としての習性(思わず尻尾を振ってしまうなど)
から出る行動とのギャップがおかしくてクスッと、笑ってしまいます。

読んでいて、何度も涙が出てくるのは、どう生きるかについてレオが
患者たちに語りかけるシーンです。

時間が限られているからこそ、思い込みにとらわれることなく
ひたすら、一生懸命に毎日を過ごし、生きること。
それが大事なんだと、ツンデレ気味な死神のレオは
教えてくれます。生と死について改めて考えさせられ、
そしてたくさんの涙と感動をくれる物語です。