ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

たぬきとの算術対決はレベル高し!!

『ちんぷんかん』の

イラストブックレビューです。

 

ちんぷんかん (新潮文庫)

ちんぷんかん (新潮文庫)

 

 
病弱な若だんなとあやかしたちが江戸で活躍する
しゃばけシリーズ第6弾。ついに若だんなが死んじゃった?
三途の川を渡るのか、元の世界に戻れるのかを描いた
「鬼と小鬼」、本の中に引き込まれてたぬきと対決する
「ちんぷんかんぷん」など、五つの物語を掲載。

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火事の煙を吸ってしまい、いよいよ三途の川まで
やってきてしまった若だんな。
河原で石を積む子どもたちの向こうには三途の川が。
そして袂には、この世界にいっしょに来てしまった
小さな小鬼、鳴家が。この鳴家だけでも元の世界に
帰してやらねば…と策を巡らす若だんな。

病弱な若だんなだけに、あら、いよいよ危なくなったのかしら?
と読者の方も納得なシチュエーションです。
賽の河原で石を積む子ども、積んでは壊していく大きな鬼たち。
ハッキリとは覚えてないけれど、むかーしおじいちゃんおばあちゃんに
聞いたようなお話が具体的なビジュアルとして頭に浮かんで
くるのは結構インパクトがあります。

若だんなが脱出する方法も、日本神話であるイザナギの物語を参考にして
鬼から逃げるのですが、お話の中でしかなかったような世界が、
若だんなという青年の存在でもって行動していくと、
しゃばけ自体がファンタジーなのに、そこをベースに
さらに別の世界のファンタジーが現れるような不思議な
感覚を覚えます。

怖いような、怖くもないような、そして静かに絶望感が漂っている。
死後の世界はそんな風になっているのかな、という印象を受けました。

そして、お坊さんとたぬきが対決するお話ちんぷんかんぷん。
若だんながあやかしの相談に訪れるのは、上野の僧侶、寛朝。
彼に仕える秋英は、弟子となって10年になるのですが、師匠のように
あやかしを退治したり、解決するような能力は、自分には
ないと思っています。

しかし、寛朝から依頼主の話を1人で聞いてやれ、と指令が出ます。
この依頼主というのが実はたぬきであった…。
というお話です。

たぬきの妖力により、本の中に閉じ込められてしまった秋英は
たぬきと算術対決をすることになります。
互いに問題を出し合い、回答を出し合います。
この問題がものすごくハイレベル。
自分が算数数学苦手なせいもありますが、それはもタイトル通り
まさにちんぷんかんぷん。

つるかめ算、距離と時間の問題、船の運賃、油わけ算…
寺子屋でこれくらいはみんなできるのか?と思うと
江戸時代の教育はハイレベルでびっくりします。

最初は順調に対決していましたが、秋英は計算ミスをしてしまいます。
追い詰められた秋英は答えはわかるけれども、説明を求められたら
答えられない、という問題を出します。

結果、秋英はたぬきに勝利し、無事に元の世界に戻ってきます。
あやかし対決に勝利した秋英は、自分にも能力があるということ
に気付かされます。そして、そんな自分をあたたかく見ていて
くれている寛朝や若だんなのことも。

これで、少しは役に立つことができる、そう感じてうれしい
気持ちになる秋英は、根がまっすぐでとても真面目な青年だなと
思います。

口が悪いけれども秋英の才能を早くから見抜き、暖かく見守って
来た寛朝。寛朝は秋英に、自分を、自分の能力を認めなさい、と
諭します。この言葉がスッと胸に落ちた秋英は、じきに寛朝の
右腕となって活躍していくに違いありません。
登場人物たちの優しい気持ちが溢れている、読後感の良い物語です。