ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

商人の嫁として、新たなステージが始まる

『あきない世傳金と銀 3 (奔流篇) 』の

イラストブックレビューです。

 

あきない世傳 金と銀〈3〉奔流篇 (時代小説文庫)

あきない世傳 金と銀〈3〉奔流篇 (時代小説文庫)

 

 女衆として、大阪の呉服屋で働くこととなった少女が
自らの聡明さと誠実さを武器に、商いの道で活躍していくあきない
世傳シリーズ第三弾。

 

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三代目店主の後添えとなった少女、幸。しかし、夫は
不慮の事故で亡くなり、店の次男であり、四代目店主となった
惣次と結婚し、改めて店主の妻としての立場を得ることに。

三代目によって傾きかけた五鈴屋を、従業員の意識改革から
始め、運営の仕方までを大々的に変更し、見事に立て直した惣次。
しかし、冷徹とも言えるそのやり方には、反発も起こります。

その部分をうまくフォローすることと、そして何より、幸の
商売に対する発想の豊かさ、知恵を惣次は欲しがっているのです。
さらに面倒な事に、惣次はその幸のアイデアは全て自分の成果にし、
幸が表に出ることも、余計な口出しをすることも一切否定するという、
男としてのプライドがエベレスト並みに高いという困った
夫なのです。

もとは女衆という立場なので、自分の分はわきまえて上手に
陰で支える幸ですが、惣次のその冷酷無比な商売のやり方に
たまらず口を出してしまいます。

仕事はできるが情がない、幸の商才を認めるが自分より目立つ形で
彼女が皆に評価されるのは我慢ならない。そして幸の美しさ、性根の
まっすぐさを誰よりも理解し、愛しく思っている。
様々な思いが巡る、不器用な惣次の心の中が手に取るように
伝わってきます。

そんな惣次の気持ちを、理解できたり、できなかったりする幸。
幸は、幸なりに旦那さんである惣次を大切に思っているし、
店の発展に協力したい、とひたむきに頑張っている姿が心を打ちます。

幸の商才が徐々に成果を発揮していく今回の物語。
現場の力は、もちろん惣次にかなわないのですが、商売に対する
発想力、お客や取引先に対する誠意の分、惣次よりも上回るところが
あるようです。

ようやく女性として大切にされるかと思いきや、夫のプライドと
お店の運営に振り回される幸。
女性として商いの道を全うすると決意した彼女は、今後どうやって
問題を乗り越えていくのか。続きが楽しみです。