ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

人の生き様を包み込む、旨い酒と飯

『居酒屋ぼったくり』の

イラストブックレビューです。

 

居酒屋ぼったくり

居酒屋ぼったくり

 

 東京、下町にひっそりとある居酒屋ぼったくり。
名に似合わずお得なその店には旨い酒と料理、そして
下町の義理人情がある。

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親が経営していた居酒屋を継いだ美音。
その時々に旨い料理を、旨い酒とともに出す。

初春の肌寒い夜にはあつあつのおでん。
これに合わせるのは、すっきりとした味わいの鳥取純米酒、諏訪泉。
じっくりと燗をして香りを目一杯開かせる…。

お燗は得意ではないのですが、ここまで手をかけて
料理に合うように出してもらったら、たまりません。
飲みたい!食べたい!今すぐに!!

また、特別感のあるメニューではないところがいいんです。
おでんやナスの田楽、豆腐の揚げっぱなしなど、家庭でも
出てくるような食べ物なんだけど、そこにこの店主ならではの
ちょっとした工夫や気遣いが施されていて、それが食べる人や
飲む人を嬉しい気持ちにさせてくれるのです。

目の前にいる人が、自分のために作ってくれる料理って
特別で、気持ちも満たしてくれますよね。

お客さんたちも、そうしたメニューをまずは自分の舌で味わい、
次に自分の家族がかつて作ってくれた味を思い出したりしながら、
二重に幸せな気分を味わえるのです。

お店のお客さんたちが揉める事なく、いつ和やかに飲んだり食べたり
しているのは、店主の人柄ももちろんですが、この相手を想う料理が
あるからなのではないかな、と思います。

店主の女ながらに、まっすぐでちょっとウィットの効いた客の
あしらいも好感がもてます。
下町の人情あるやりとりと、旨い酒と料理。
クセになりそうな味わいです。