ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

君の涙を、忘れない

『小暮写眞館IV: 鉄路の春』の

イラストブックレビューです。

 

小暮写眞館IV: 鉄路の春 (新潮文庫nex)

小暮写眞館IV: 鉄路の春 (新潮文庫nex)

 

 

英一の父親が家出した。
実父の危篤の連絡を受け、行くかどうかで母親とケンカしたという。
それをきっかけに、2人は幼くして亡くなった妹、風子について話し合う。
また、垣本順子の過去も明らかになり…。

f:id:nukoco:20171123111653j:plain

かわいい盛りに、妹風子は、インフルエンザ脳症で幼い命を亡くしました。
英一は記憶を引き出しにしまっていたが、父親と当時の事を話し、
引き出しの中からひっそりと思い出を取り出したのです。

風子を亡くした事を親戚連中から責められる母。
それを庇いながらも、身内との縁を断絶する事を決めた父。

1番小さな弟の看病疲れで数時間寝てしまい、その間に症状が悪化したために、
自分が風子を死なせた、と思っている母。
その大変な時に、出張で母のそばにいてやれなかったから、風子の死は
自分のせいだ、と言う父。
当時は赤ちゃんだったけど、自分の病気のせいでお母さんはお姉ちゃんを見る事が
できなかったから死んだ。ふうちゃんはきっと僕の事を怒っている、と
感じている弟。
そして、夜中に目が覚めて風子の様子が変な事に気づいたが、母も看病疲れで
寝ているし、明日でいいか…と判断したから風子が死んだのは自分のせいだと
思っている英一。

一家は皆自分のせいで風子が死んだと思っているのです。
お前のせいじゃない、自分が悪いんだから…と家族に言いながら。
自分が傷つきながら、互いを守ろうという気持ちが溢れている家族の様子は
やさしく、そしてせつなくて悲しいです。

それでも、各自の膿を出し合った後、家族は新たな局面を迎えます。
英一は、花菱家長男として、いや1人の男として、断絶した親戚の前に出向き、
今までの思いを吐きだします。

それは英一が、花菱家に属した子供から、守る側に立った瞬間だったのだと
思います。1巻から比べて、何と大人になったことか。
一連の出来事を経験して、英一は大人社会へ飛び込み、わからないなりに
動き回り、そしてどうにか1人で歩いていけるようになった成長の物語なのかなと
思います。

垣本順子の過去も明らかになります。
英一との関係は、淡く、ハッキリしたものではありませんが、少しずつ
距離が近づいていったようです。英一は、垣本順子内面をいつも見ていたように
感じます。彼女の中の儚さや弱さに惹きつけられていったのかなと。

家族や人とのつながり、悲しみを伴う優しさ。
生きていくには人とのつながりは避けては通れないことです。
英一は、そんなやさしさをいつも感じる事ができるから、人にも優しく
できるのだと思います。
少しの寂しさを感じつつ、とっても満足できた最終巻でした。