ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

大学教授、作家の本の読み方は実に多角的かつ深い

世につまらない本はない』の

イラストブックレビューです。

 

世につまらない本はない (朝日文庫)

世につまらない本はない (朝日文庫)

 

 養老猛司、池田清彦、吉岡忍が雑誌アエラで本について対談した内容を
まとめたもの。
学者、作家、それぞれの視点から本について語っています。

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『読み聞かせと子どもの脳』『読書脳の仕組み』『唯我独尊としての読書』
バカの壁を越える読書』など、章題だけでもどれもこれも興味をそそられます。

第1部では養老氏が脳の働きという観点から、本や読書について話しています。
養老氏の視点は非常に独特です。
ご本人も考え方が西洋的、とおっしゃっていますが、世の中というものを
実に客観的に見ています。世の中と自分が繋がってないんじゃないか?
というくらい冷静な目で物事を見つめ、分析してます。
そのため、読書方法もすごくて、本を読む時には、作者の見方で見えて
いないところを見つける、というもの。
これは精神科医時代に培ったようで、患者さんの見え方で欠落している
部分は何か、と考えていたために、そのような読書方法になったようです。

自分には見えない、他の人が見ているもの。それを知るためのコミュニケーションツールが
読書というわけです。それ故、養老氏は様々なジャンルの本を読み、その著者の、
登場人物の見方、見えてない部分を知ることによって、他との違いを知るため
世につまらない本はない、と言っています。なるほどですね。

第2部以降では養老氏、池田氏、吉岡氏三方による鼎談になります。
これもまた、学者に作家、そして生きてきた時代背景なども異なる3人なので
話の内容もあちこち飛んだりもしますが、特定のジャンルに詳しかったり、
ああ、この人がこのジャンルを勧めるとこういうのが出てくるのか!と
新鮮な驚きを感じたりもします。

何しろ、学者の知識の広さ、深さといったら… 
おみそれしました、と言わざるを得ないかんじです。
学問というのは、つきつめていくうちに哲学も社会学も生物学も何でもかんでも
繋がってきてしまうのではないの?という感覚に…。
先生方はそれなりに整理して頭にインプットされているようで、さすがです。

読んでる方も、今まで全く興味がなかった科学や歴史、文学の本など
内容のあらすじだけでなく、『そういう風に読むんですね!』っていう
自分では思いつかなかったアプローチ方法もあったりして、刺激的です。

紹介されている本は新刊というわけではありませんが、世界情勢に政治、
文化、社会、自然など様々な世界があることを情報として与えてくれ、
かつそこから何を得るのか?そして何が足りていないのか?ということを
読者に提示してくれるような本たちだと思います。

欲しい本が増えて困りますが、これも脳のためだと思って(笑)
今後も読書にいそしみたいと思います。