ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「教育」を徹底的に科学分析

『「学力」の経済学』の

イラストブックレビューです。

 

「学力」の経済学

「学力」の経済学

 

 「ゲームは子どもに悪影響?」
「子どもはほめて育てるべき?」
「勉強させるためにご褒美で釣るのっていけない?」
個人の経験で語られてきた教育に、科学的根拠が決着をつける!

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一部の教育者やコメンテーターが語る教育論。
これは果たして事実なのでしょうか?

「教育経済学」を研究する著者は徹底的に科学的分析を
実施します。というか、日本では子どもの成績と行動や環境に
ついて、データを集計し、分析し知見を得る、ということが
まだまだできていないそうで、まずはデータをもらえないことも
多くあるそうです。

そこで、この分野では先進的な、アメリカでの実験データを用いて
説明しています。
この合理的加減は、アメリカっぽいなあと思いますが、
「教育」は「投資」です。お金や手間をかけて育った子どもたちが
将来どのくらいお金を稼いで社会に還元するか。
国にとってどれくらい経済効果をもたらすのか。

「そんなのわからない」「人による」とか日本政府は言いそう
ですが、アメリカは研究者が徹底的に分析し、知見を得て、政府に
報告。そうすると政府は「じゃあ教育にはこんだけ予算つければ、
10年後には○○ドル稼げる若者がこれだけいるわけね」
となる。理由を問われた場合には、データを出せば一目瞭然です。

データによってわかる点はほかにもいろいろあります。
たとえば「ゲームは子どもに悪影響?」という点について。
これもテレビのコメンテーターなんかは、少年事件と結びつけて
まことしやかに「ゲームばかりやっているから暴力性が
高まった」などと発言したりしています。

こちらについての調査結果は、「影響はほとんど見られない」
そうです。
ちなみにゲームをやめたら勉強時間が増えるのか、という調査では
一時間ゲームをやめさせたところ、女子は最大2.70分、男子は最大1.86分、
勉強時間が増えたそうです(ガクッ)。

ちなみに一時間程度のゲームはストレス解消やリフレッシュ効果も
あるそうで、暴力的なゲームをやったとしても、影響はほとんどなく
子どもたちはあくまでゲームとして楽しんでいるだけとか。
一時間以上となると、影響も出てくるようなのですがね。

これも、専門家と称する人やキャスターがもっともらしく語る内容、
つまりメディアなどから「思い込まされていた」情報と異なるのです。
この「思い込まされていた」という事実に気づいて、自分としては
驚きました。

日本においての「教育」は聖域扱いだかなんなのか、精神論的な
ことが多く言われている中、客観的なデータを踏まえて教育を
考える、というのは新しい視点を与えられたようで非常におもしろいです。

お子さんをお持ちの方はもちろんのこと、そうでない方にも
楽しめる内容だと思います。