『月の影 影の海』の
イラストブックレビューです。
女子高校生陽子のもとに、ケイキと名乗る男性が現れ、陽子の足元に
跪く。そして陽子は異世界へと連れ去られる。
気がつくとたった一人で異世界を彷徨う陽子に、次から次へと妖魔たちが
襲いかかってくるのだった。
『十二国記』の本編となる衝撃の第一作。
プロローグとなる前作『魔性の子』では、この十二国記の世界観はチラッとしか出てきませんでしたが、
本作で十二国の全体像が明らかとなります。
わけもわからず、この世界に連れて来られた陽子。捕らえられ、連れていかれる
途中に、異形の獣に襲われます。持っている刀で次々と切り倒していく陽子。
それは自分の意思ではなく、彼女に憑依している妖魔が、彼女の手足を動かしているのです。
初めて見る世界、恐ろしい獣たち、元の姿と異なってしまった自分…。
必死に生き延びる陽子に、幻影が囁きます。『自分で命を絶ったら楽じゃん』。
そして、もとにいた世界を陽子に見せつけるのです。
傷ついた陽子を助けてくれた人もいました。しかし、裏切られました。
心も体ももう限界!というところまであちこちやられてしまうのです。
読んでいる方もつらい。ダメージ受けてるんだから今は襲わないで!!
と心の中で叫んでしまいました。
それでも、自分がここにいる意味を理解せずに犬死にはしない!と必死に
生きていきます。何回か助けてくれる人が現れます。
でも、信じているわけではない、利用するところは利用すればいいのだ、
と逞しく成長した部分を見せる一方で、そんな自分に嫌気がさすという、
純粋な部分も持ち合わせているのです。
裏切りは相手がした事。裏切られたって、自分が変わるわけじゃない。
この一言に、陽子の強さと清廉さが強く伝わってきます。
陽子に待ち受ける運命は、決して穏やかなものじゃありません。
でも、彼女の自分の弱さを認めた強さがあれば、その先は決して悪くならないのだと
思います。
一人の人間が異世界に放り込まれ、傷つきながら成長をしていく物語です。
と、一言で片付けるにはもったいないほど、世界観がとても魅力的ですし
その世界ホントにあるんじゃないの?と思ってしまうほどの、細部まで
リアリティに溢れる描写で、ホントに途中でやめることができずに一気読み間違いなしです。
時間があるときに読むことをオススメします。