ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

傷つき、裏切られた果てに待ち受ける運命

月の影 影の海』の

イラストブックレビューです。

月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)

月の影 影の海〈上〉―十二国記 (新潮文庫)

 

 

月の影 影の海〈下〉―十二国記 (新潮文庫)

月の影 影の海〈下〉―十二国記 (新潮文庫)

 

 女子高校生陽子のもとに、ケイキと名乗る男性が現れ、陽子の足元に
跪く。そして陽子は異世界へと連れ去られる。
気がつくとたった一人で異世界を彷徨う陽子に、次から次へと妖魔たちが
襲いかかってくるのだった。

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十二国記』の本編となる衝撃の第一作。

プロローグとなる前作『魔性の子』では、この十二国記の世界観はチラッとしか出てきませんでしたが、
本作で十二国の全体像が明らかとなります。

わけもわからず、この世界に連れて来られた陽子。捕らえられ、連れていかれる
途中に、異形の獣に襲われます。持っている刀で次々と切り倒していく陽子。
それは自分の意思ではなく、彼女に憑依している妖魔が、彼女の手足を動かしているのです。

初めて見る世界、恐ろしい獣たち、元の姿と異なってしまった自分…。
必死に生き延びる陽子に、幻影が囁きます。『自分で命を絶ったら楽じゃん』。
そして、もとにいた世界を陽子に見せつけるのです。

傷ついた陽子を助けてくれた人もいました。しかし、裏切られました。
心も体ももう限界!というところまであちこちやられてしまうのです。
読んでいる方もつらい。ダメージ受けてるんだから今は襲わないで!!
と心の中で叫んでしまいました。

それでも、自分がここにいる意味を理解せずに犬死にはしない!と必死に
生きていきます。何回か助けてくれる人が現れます。
でも、信じているわけではない、利用するところは利用すればいいのだ、
と逞しく成長した部分を見せる一方で、そんな自分に嫌気がさすという、
純粋な部分も持ち合わせているのです。

裏切りは相手がした事。裏切られたって、自分が変わるわけじゃない。
この一言に、陽子の強さと清廉さが強く伝わってきます。

陽子に待ち受ける運命は、決して穏やかなものじゃありません。
でも、彼女の自分の弱さを認めた強さがあれば、その先は決して悪くならないのだと
思います。

一人の人間が異世界に放り込まれ、傷つきながら成長をしていく物語です。
と、一言で片付けるにはもったいないほど、世界観がとても魅力的ですし
その世界ホントにあるんじゃないの?と思ってしまうほどの、細部まで
リアリティに溢れる描写で、ホントに途中でやめることができずに一気読み間違いなしです。
時間があるときに読むことをオススメします。