ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

食事から伝わる日常の大切さ

キッチンぶたぶた』の

イラストブックレビューです。

キッチンぶたぶた (光文社文庫)

キッチンぶたぶた (光文社文庫)

 

 ぶたのぬいぐるみ、ぶたぶたさんが営む洋食屋には
様々なお客がやってきます。
その料理と佇まいで、訪れた人たちに見えていなかったものを
気づかせてくれるのです。

f:id:nukoco:20170830083557j:plain

ぶたのぬいぐるみ、その名も山崎ぶたぶたさんは見た目は
かわいいぶたのぬいぐるみ、中身は分別のある落ち着いた
中年男。

その見た目に人は驚き、興味をかられ、その料理の腕前と
味、そしてぶたぶたさんの思慮深い言葉から、新しい視点を得るのです。

いくつかの短編の中、印象に残ったのはこちらの話。
ある日、突然に料理の匂いがしなくなったサラリーマン、映一。
好きな仕事に就き、家族にも恵まれ、何の不足もない日常と
思っていたのだが。このところ料理の匂いがせずに、困惑する日々を過ごしています。

通っていたスポーツジムのサウナでぶたぶたさんに出会ったことが
きっかけで、ぶたぶたさんお店に通うことに。
そこでスープをご馳走になったり、味噌汁の作り方を教わったりしているうちに
自分自身の内面に気づいていきます。

代わり映えのない日常に嫌気がさしていたこと。
恵まれた環境なのだからと、その気持ちに蓋をしていたこと。
心を込めて作ってくれたものには味がすること。
その料理はいつも妻が作ってくれていたこと。
代わり映えのない日常に、妻の料理があること。

ぶたぶたさんは食べ物周りを非常に大切にしています。
相手を思って作ること、相手を思って食べること。
日々の食事は、そんな大切な人々の気持ちに溢れているということを
気づかせてくれるのです。

読んだ後は、作ってくれた人、食べてくれた人に思いを馳せて、
日々好きな人食卓を囲むことのありがたさ、美味しい食事を
美味しいと感じるありがたさを強く感じます。

そして毎回思うのは、うちの近所にもぶたぶたさんのお店が
あったら通うのになあ、ということ。
いつか 会えるといいな、そんな想像も楽しい、あったか
キッチン物語です。