ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

ときめき要素満載のお江戸幻想奇譚

しゃばけ』の

イラストブックレビューです。

しゃばけ

しゃばけ

 

 江戸有数の大店、廻船問屋一人息子である一太郎
大変病弱なために、親や周囲の人間は非常に過保護に彼をお世話する。
こっそりと家を抜け出した一太郎は殺人事件目撃する。
そこで、彼は妖怪たちを使って事件の解決に臨む。

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病弱な一太郎は、病弱で、少しのことですぐに熱を出す。
子供の頃から兄がわりでそばについてくれているのは店の手代である
仁吉と佐助。5つほど年上の彼らは、実は1000年以上も生きている
妖怪であった。

というと、おどろおどろしい世界が繰り広げられるのかと思いきや、
この二人、一太郎に対してメチャメチャ過保護なんである。
一太郎がクシャミひとつしようものならたちまち床をしいて
白湯を差し出す。一太郎はもう17歳。
過保護な妖怪たちにため息をつきつつも、実際自分の体が弱いことは
事実なのであえて文句は言わない。育ちがいいんである。

幼い頃から床についていることが多かった一太郎には、仁吉と佐助のほかにも
優男風のなりをして屏風から出てくる屏風男、小鬼のような姿形で
たくさん出てくる鳴家(やなり)など多くの妖怪たちと時を過ごしてきた。
彼らは、お菓子をくれたり、褒めて撫でてくれる一太郎が大好き。
わらわらと一太郎に群がる姿は微笑ましくて、可愛らしい。

妖怪に囲まれて暮らしている一太郎、体は弱いが頭は切れる。
そこで妖怪たちを使って聞き込みを行い、事件の解決に挑むのだ。
彼が自分の弱点を理解し、諦めるでもなく、ふてくされるのでもなく、
やるべきことに立ち向かって行く姿に好感が持てる。

ふだんから人にも妖怪にもやさしくて、その上、やるときには
彼らの助けを得ることなく、自分で敵に挑んでいくのだ。
その方法も、一太郎らしく、頭を使って賢いやり方でいくのがまたいい。

妖怪という濃いキャラクターの背後で決して埋もれることのない
病弱なお坊っちゃまは、芯の通った男なのである。
でも体が弱いから、頑張った後はまた寝込んじゃうのだけど。

非常に読みやすい、堅苦しくない文章と、情景が浮かび上がってくるような
背景の描写、何より、妖怪も人間たちもイキイキと動き回る姿が目に浮かぶ
楽しいお江戸妖怪奇譚。時代物が苦手という人にも楽しんで読めると思います。