ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

作家たちの作品に対する考えが刺激的

文藝モンスター』の

イラストブックレビューです。

文藝モンスター (河出文庫)

文藝モンスター (河出文庫)

 

 文藝賞受賞者が集まって開催される飲み会で、殺人事件が発生。
ミステリー、ホラー、文学、エンタテイメント、あらゆるジャンルの
作家たちが各自の推理を繰り広げる。

 

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登場する作家たちのキャラクターが際立つ作品です。
自分の書いたホラーが怖すぎて気絶してしまう、超怖がりのホラー作家や、
編集部さえ一度もその姿を見たことがないという恋愛ものが好評価な謎の作家、
小説の一文一句、ページ数まで正確に記憶するミステリ作家など。

主人公の、今回受賞された女性作家が1番地味。というかまとも。
しかし、この人がいないと順調に物語は進みません。

過去と現在の文藝賞受賞者が集まる飲み会、こちらで猟奇的な殺人事件が
発生します。参加者全員並びに、飲み会の会場主人が容疑者に。
互いにアリバイを確認し合ったり状況分析をして推理します。

ここで超怖がりのホラー作家が、怖いのは知らないからだ!
という理論のもと警察も無視してガンガン調査しまくります。
このへんのくだりは、現実の世界の住人VS夢の世界の住人ようで、やりとりが
ずれている感じがおもしろい。

正直、事件の内容と結末に関しては、うーん?と首をひねる部分も。
事件の内容に関しては、犯行を実施するには時間が足りないのでは?とか
結末については、年齢設定がちょっとおかしくないか?とか。

しかし、この作品、ミステリとは言いますが、本当に注目すべきは
登場する作家たちが述べている本についての見解。

作家は書きたいものを書かせてもらえない
作家は売れるものを書くべき
書かなくては生きていけない
本は作家の感情の垂れ流し

などなどこれはほんの一部分。作家が変人だと言われたり
するのは、このようなことを考えているからなんだなと。

そして、作家と編集者・出版社は基本的に相容れない存在であると。
でも、良い本を世に出そう、出したいという気持ちは互いに同じで
あるのではないか、ということを本書は教えてくれているのかなと
思います。

本を書く、作る、売るということはどういうことなのか。買う、読む
とはどういうことなのか。
本との関わり方を今一度見直すことができる物語です。