ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

2人の運命の歯車を狂わせた幼い日の出来事

最後の命』の

イラストブックレビューです。

 

最後の命 (講談社文庫)

最後の命 (講談社文庫)

 

ある日、自宅に帰ると女の死体があった。
犯人は、ある事件がきっかけで疎遠になっていた幼馴染の冴木。
彼は指名手配中の容疑者となっていた。

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彼らは幼い頃、浮浪者たちが知的障害を持つ女性がレイプされる
現場を目撃した。その後、被害者の女性が死体となって発見される。

この事件により、一方は自分を責め 、倫理とは何かと考え、自分の
中にもこのような衝動が隠れているのかと思い悩み、
もう一方は、その時に受けた衝撃を求めて、犯罪スレスレの道を
歩いていくようになる。

人間の感じ方、その感じる力をどのように自分の土台にして
いくかというのは個人差がある。犯罪を目撃した恐怖、犯罪を
行う者たちの悪意に満ちた様子は、少年の心に深く重い液体の
ようにだんだんと溜まっていく。
その重い液体が彼らの土台として築かれている。

こういった事件を目撃し、上手に消化することはできるのだろうか?
彼らは精神を病んだり、自ら犯罪への道を進む事態となっている。
これは仕方のないことなのではないか?
避ける道はあったのか?

連続女性暴行犯として指名手配されていた冴木の真実。
そこには悪に染まる怖れに震えながらも、染まりきれない、ある意味
ピュアな心の持ち主と言えるだろう。
その心の土台に、ドロドロとした淀んだものを抱えていたとしても。

決して幸せにはなれないであろう二人が、互いを思い合う。
救われず、悲しくて、美しい物語。