ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

がんばれ書店員!素直にエールを送りたい

書店ガール (PHP文芸文庫)』の

イラストブックレビューです。

書店ガール (PHP文芸文庫)

書店ガール (PHP文芸文庫)

 

 

吉祥寺にある書店のアラフォー副店長理子は、部下亜紀の扱いに
手を焼いていた。協調性がなく、恋愛も自由奔放。
仕事でも好き勝手な提案ばかり。一方の亜紀も、ダメ出しばかりする
「頭の固い上司」の理子に猛反発。そんなある日、店にとんでもない危機が……。
書店を舞台とした人間ドラマを軽妙に描くお仕事エンタテインメント。

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書店員のお話、というのはいろいろとあると思うのだけれど
この『書店ガール』は、自分にとって共感度がすごく高い。
副店長、新人、アルバイトなどなど、特に誰にというわけでは
ないが書店という職場、それぞれの立場、働き方・生き方に
深く納得してしまうのです。

もと出版社勤めとしては、比較的版元寄りの目線で見て
おります。書店営業も経験しましたが、この業界、好きじゃ
なきゃやってられませんよ!

新刊が毎日どしどし入ってきて、棚の入れ替え、返品業務、
受注発注で体は使うわ、お客様には気を使うわ。

気力・体力共に大変なお仕事でもありますが、売上が出せず
ビルから撤退の危機・・・ というのは某新宿紀伊国屋書店
南口店を思い出します。

それでも副店長、理子はなんとかしようと奮起するわけです。
そんな事情を知らないはねっかえり娘の亜紀との衝突も見ものです。
イデアを豊富に持ち、実行するパワーを持つ亜紀、そして運営側
から冷静に判断し、時にストップをかける理子。

女性ならではのかんぐりも多少発生しますが、それでもいやな印象を
受けないのは、共に『本が好き、書店が好き』という強い気持ちを
持っていることがビンビンと伝わってくるから。

こういう気の強いパワフルな子が部下にいると、面倒だけど
おもしろい企画をどんどんやれそうだな、と思わせてくれるので
どちらかといえば理子に気持ちが近いかな。年代も近いし。

そして2人を隔てる壁がとっぱらわれた時。
ともにプロジェクトを達成した同志として、深い絆が生まれます。
困難な仕事を乗り越えた後ほど、信頼度が高まりますよね。
そこが感じられるのもいいんです。

たまに、つらいのに、なんでこんなことやってるんだろうと
思うこともあるけれど、障害があるからこそ自分がこの仕事が
『好き』ということに気付けるんですね。

『がんばれ諸店員!』と素直にエールを送りたくなる、
そんな物語です。