ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

作家とともに時を紡ぐお菓子たち

作家のお菓子 (コロナ・ブックス)』の

イラストブックレビューです。

作家のお菓子 (コロナ・ブックス)

作家のお菓子 (コロナ・ブックス)

 

 

 谷崎潤一郎吉行淳之介野坂昭如、大村しげ、ナンシー関
水木しげるなど、作家たちが愛したお菓子と、それにまつわる
エピソードを紹介。

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なかでも印象的だった記述は大村しげという随筆家の章。
章のタイトルは『甘いもの嫌いが選ぶ京ならではの甘味』。

本人の文章のなかでも

『わたしはいまでも甘いもんはきらいで、お菓子が大好き
というから、笑われる。それでも、ほんまのお菓子は、
甘さを殺して、殺して作ってあるので、少しも甘いことはない。
のど越しがようて、あとにあずきのかおりがほーっと口に残る。』

この表記に強い共感を覚えたのです。私も甘いものは苦手。
でも『さっぱりと甘くておいしいもの』は好き、というめんどくさい
感覚の持ち主なのですが、大村しげさんがわかりやすく
言葉にしてくれました。

そんな彼女が好んだのは味噌松風に焼き芋、胡麻が香ばしい
せんべい、さっぱりとした水仙ちまきに羊羹ちまきなど。
味噌の風味が効いていたり、素材のほのかな甘みが上品に
漂ってくるような、そんなお菓子たちです。

中でも、吉野の葛と砂糖を原料とし、笹の葉で包んだ後、いぐさ
で巻いてゆがくという『水仙ちまき』と、さらに小豆を加えた
『羊羹ちまき』は、死んだ後には必ず供えて欲しい、というほど。

写真からも柔らかな舌触りが伝わってくるよう。
あんこも好きではないのだけれど、これはちょっと食べてみたい
と思わせる文章と写真です。

他にも、洋菓子や和菓子、家族や本人が作った手作りのお菓子など
作家に愛され、ともに時を過ごしてきたお菓子たちが紹介されています。

仕事の合間のリフレッシュに、または仕事を始める前の儀式として、
様々な用途で食べられています。
水木しげるやなせたかしのそのお菓子への思いは、仕事への
ストイックさも同時にあらわしていて感慨深い。

どの作家さんも、食べ物を大事にしているなあ、と
いうことが伝わってきます。
お菓子が出てくるわくわく感、口に入れる満足感。舌触り。
あらゆることを感じて、味わって食べていたのだな。

作家さんの生き方や人生に思いを馳せつつ、お菓子を味わえば
また違った味わいを体験できそうです。