ぬこのイラストブックれびゅう

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雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

芸術の女神に愛された者たちの日常とは

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』の

イラストブックレビューです。

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

 

 芸術界の東大。それが『東京藝大』。
その内部に作家が潜入したルポルタージュ
芸術家たちのカオスな日常が明らかに。

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狭き門をくぐりぬけ、芸術を学ぶべく訪れたその世界は。
工場のような広さを持ち、あらゆる器具が揃った作業場。
工業、木工、絵画など学部も多岐にわたり、その作品たちも
一言で表せないような、独特なものも多い。

学長いわく、『日本の芸術は君たちが牽引していくのだ』そうで
そういう意味では先駆的な取り組みも珍しくないようです。

個人的におもしろいなあと思うのは、その期待を裏切らない
変人ぶりを発揮している方が多くいるということ。
『作り出す』ということがイコール生きる事につながって
いる。創作と社会的に生きる事は必ずしも一致していないというか。
作ること、表現していくことを突き詰めていくと、社会的活動は二の次になる。

一方で冷静に将来を見据えて、在学中から活発に活動している
学生たちも多数いるという事実。これは音楽に取り組む方に
多いようです。音楽の道へ進む人たちは、学生のうちに勉強だけでなく実践の場を
こんなに経験していくものなのだということをはじめて知りました。
それに関わる活動にお金もかかるし、その見た目の華やかさの影で
一日休むと取り返しがつかないため、毎日の練習を欠かさない
努力を続けているということも。

それから学部の多さや、その先にある仕事の種類の多さについても驚きました。
本人やお子様で芸術方面に才能がありそうだ、興味があるという人は
ぜひ読んでみてほしいです。芸術の世界は奥も深いが幅も広い。

芸術に興味がない人でも、軽妙なタッチで描かれたおもしろおかしな
登場人物たちや、一般大学とはことなる構内の様子は充分に楽しめます。
幅広い年代に楽しめる、良書だと思います。