『あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)』の
イラストブックレビューです。
店の立て直しをはかるため、女衆でありながら
店の若旦那と14歳で結婚することになった幸。
店のお金まで使い込み、店を傾けさせてしまう若旦那。
女衆あがりが、という周囲の目線にめげることなく、
自分のやることは商品の知識を得ること、と前を向いて
真っすぐにすすむ幸。
結婚とはいえ、傾きかけた店で決して恵まれた状況とは
言えません。その中で長く会えなかった母と妹が式の
ためにやってきて再会し、良かったと涙を流すシーンには
こちらも思わずもらい泣き。
純粋に娘が幸せで良かった、という喜ぶ母。綺麗な姉を見て
憧れる妹。ここでキッパリと生まれた家と決別したというか
はっきりとした溝ができたように思います。
あちら側とこちら側、といったような。
それは幸が自分の生き方に覚悟を決めたから。
逃れられない状況ではあるけれども、『あきらめ』ではなく
自分で選んだのだ、という意思を持つところがすごい。
だからこそ、その後に起こる出来事にもくじけることなく向かって
いけるのでしょう。
14歳から16歳という、女性としても次第に花開き、変化して
いく時。幸にとっては未知の世界へと踏み出していくことに
なります。
第1作に続き、幸が精神的にも身体的にも成長している姿が
しっかりと感じられることがとても嬉しく感じます。
第2作の今回は、最悪の事態は免れたがまだまだこれから
波乱が巻き起こる予感を感じさせる終わり方です。
江戸時代の大阪の商人、という全く馴染みのない環境に
これだけ共感できるのは、やはり作者の腕なのかなあ、と
思います。この作品とは長い付き合いになりそう。
そんなうれしい予感がします。