バーと競馬場に入りびたり、ろくに仕事もしない史上最低の私立探偵
ニック・ビレーンのもとに、おかしな依頼が来る。
調査に乗り出すうちにいくつもの奇妙な事件に巻き込まれていく。
死神、浮気妻、宇宙人等が入り乱れ、物語は佳境に突入する。
伝説的カルト作家の遺作にして怪作探偵小説が復刊。
これは、すごい作品ですね。
なんというか、「これでもか」というくらいに、ものすごい口汚い言葉が
飛び交います。あの、中指立てて吐き捨てる言葉とかはほんの序の口。
あまりの言葉の応酬に、最後まで読みきることができるのかしら?
と少し不安な気持ちに。
しかし、その後に起こる奇妙な出来事の連続に、言葉づかいのほうは
次第に気にならなくなってきます。
非現実的な出来事に対し、皮肉なことにひどい言葉で日常にあることを
気付かせるという。
ニック・ビレーンが起こす行動の結果の数々に、次第に悲しみというか
青い透明感が漂ってきます。なんやかんや言っても仕事はしようと
してるじゃないか~ でもこうなっちゃうの?というような気の毒さ。
迎えるラストは一転して真っ赤。
「生きたい」というメッセージが強く伝わってきます。
読後感は、「意表をつかれた」。
アメリカの、口汚い探偵の、非現実的な依頼を受けて実行する、という
ハチャメチャな話なのかと思いきや。言葉の影に、悲しみや生きる事への
強い願いなどをが隠されていて、文学のようだなと感じました。
すごいガサツな男が、本当は繊細だった、みたいな。
かといって、ニック・ビレーンにキュンとはしないんですけどもね。
ラストはどうなったのか?と考えさせられ、でもしっくりとした
答えを未だ見つけることができず。
数年後に読んだら、その答えを見つけることができるのかもしれません。
自分にとって記憶に残る、印象的な1冊となりました。