殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、
巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とは?
刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐ
る表題作ほか、全六篇の連作短篇集。
どこまでも非情に、冷徹に犯人を追い詰めるのは
公安出身という異色の経歴を持つ刑事。
人間としての感情があるのかも疑問が残る行動、
そして何も映さないようなその目つきには背筋が凍るよう。
彼が仕組んだ第2の時効後の罠、そしてその罠にかかる
新の犯人とは。
その罠は第2の時効が切れるその瞬間までわからない。
これがまた周囲の刑事をはじめ読者をヤキモキさせます。
そんな冷徹な刑事が一瞬、人間らしさを見せるとき。
そこにわずかばかりの安心感を感じるのです。
一方、彼の部下である刑事は、人間味溢れる人物で、事件周辺の
人物の面倒を良く見たり、同情したりします。
この対照的な二人のやりとりが、より状況を浮き上がらせ
物語に光と影を作り出しています。
短編集でありながら、全編にわたって刑事個人の
能力のぶつかりあい、犯人逮捕へのピリピリとした
緊張感が漂い、ずっしりとした読み応えがあります。
刑事たちの仕事に対する「熱さ」と「冷たさ」が
物語に温度を与えているのです。
まさに「警察小説の最高峰」ですね。