ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

小説

人工生命体の異変は何を示唆するのか

『風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)』の イラストブックレビューです。 風は青海を渡るのか? The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ) 作者: 森博嗣 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2016/06/21 メディア: 文庫 こ…

じんわり心にしみてくる 人生とお酒たちの物語

二子玉川にある大人の止まり木、バーリバーサイド。ここには疲れた大人が羽を休めるためにふらりとやってくる。お客たちが語る出来事は、読む者の心に何か影を落とす。 バーの窓から見える双子玉川。川は境界をイメージさせる。あちら側とこちら側。間には常…

安定の疾走感とキレの良さ

小劇団、シアターフラッグ。度重なる赤字運営により、劇団は解散の危機に追い込まれる。そこで手を差し伸べてくれたのは劇団運営者、巧の兄である司だった。 非常に分かりやすい、劇団再起に向かっていく劇団員たちのストーリーです。 キャラクターがそれぞ…

殺人事件とともに成長していく少年の運命は

『さよなら、シリアルキラー』の続編。 ものまね師事件が解決して数カ月、ジャズのもとをニューヨーク市警の刑事が訪れた。21世紀最悪の連続殺人犯である父ビリーに施された殺人者としての英才教育を生かして、ニューヨークで起きている連続殺人の捜査を手伝…

「生きている」と「死んでいる」の境界は?

チベット、ナクチュ。外界から隔離された特別居住区。ハギリはアネバネと共にチベットを訪れ、その地では今も人間の子供が生まれていることを知る。生殖による人口増加が、限りなくゼロになった今、何故彼らは人を産むことができるのか?! 人工生命体、ウォー…

女が去った後、男に残された影

「ドライブ・マイ・カー」「イエスタデイ」「独立器官」「シェエラザード」「木野」他全6篇。女が去った男たちを最高度に結晶化しためくるめく短篇集。 村上春樹の短編集。共通テーマは、いろんな形で女に去られた男たち。10代から50代まで、さまざまな年代…

この鉄道を支えている人たちに会いたくなる

「お金がないなら、知恵を出すのよ!」廃止寸前である赤字ローカル線の再生を託されたのは、元新幹線カリスマ・アテンダント篠宮亜佐美、31歳。魅力あふれる企画をくり出し、体あたりで頑張る姿に社内も次第に活気づいていく。しかし度重なるトラブルに悩まさ…

言葉にできない、たくさんの思い

小学四年生のフミと、六年生のマキは親の再婚で姉妹になった。姉と仲良くなりたい妹、そっけない態度の姉。とまどったり傷ついたりしながらゆっくりと「家族」になっていく。 反抗期でぶっきらぼうな言葉と態度の姉、マキ。恥ずかしがりやで、気の小さな妹、…

めっちゃ腕が立つ、超怠け者の忍び

時は戦国。忍びの無門は伊賀一の腕を誇るも無類の怠け者。百文の褒美目当てに他家の伊賀者を殺める。 このとき、織田信雄軍と伊賀忍び軍団との、壮絶な戦の火蓋が切って落とされた──。 破天荒な人物、スリリングな謀略、迫力の戦闘。「天正伊賀の乱」を背景…

何が美しいかは一人ひとりが心に決めなければならない

いつもぼんやりしていた友人のせった君。彼には嫉妬してしまうほどの音楽の才能があった。 大人になった僕たちは彼がピアノをひいている鎌倉のバーで会うようになる。 少年から青年にかけての才能、嫉妬、成長、そして起こる事件とは。 世間に認められること…

作家が紡ぐストーリーはどこまで真実なのか

妻の病名は、致死性脳劣化症候群。複雑な思考をすればするほど脳が劣化し、やがて死に至る不治の病。生きたければ、作家という仕事を辞めるしかない。 医師に宣告された夫は妻に言った。「どんなひどいことになっても俺がいる。だから家に帰ろう」。 妻は小…