ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

会話は怖くない!無理せず楽しむ会話術

コミュ障は治らなくても大丈夫 コミックエッセイでわかるマイナスからの会話力 』の

イラストブックレビューです。

 

『初対面が苦手』『うまく会話が続かない』『話し相手に何を聞いたら
良いのかわからない』。そんな、コミュニケーションが苦手な人に送る
コミックエッセイ。

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ニッポン放送の人気アナウンサー、吉田尚記さん。新人時代の彼は、
人見知りで人との会話がうまくいかず、仕事上での連敗記録を更新していた…。

ラジオ局のアナウンサーといえば、流暢に言葉を並べ、ゲストの
人とも途切れることなく楽しく会話を続けているイメージがあります。
しかし、この吉田アナは、歌手の方などとのやりとりが全くうまく
いかない。自分のことばかり話してみたり、相手の気持ちに
寄り添えなくてギクシャクしたやりとりになったり、絡みづらい人ですね、
と相手から言われてしまったり…。

意図的に自分本位に会話をしているわけではないのです。
ただ、自分を大きく見せようとしたり、相手のことをすべて理解しようと
したりしていることが、会話の足枷となっておかしな発言として表に
出てしまっていたのです。

アナウンサーという仕事だから、学校や職場のコミュニケーションと
種類が違うのでは?と思われる方もいるかもしれませんが、本書は
どんな関係の人との会話でも共通して使えるコミュニケーションを
教えてくれていると思います。
大事なのは、相手に興味を持っています、知りたいと思っていますよ、
ということを伝えること。それがコミュニケーションなのです。
自分のことを伝えたいときは、まず相手に聞くこと。
そうした手順を踏むことで、会話のキャッチボールがテンポよく
やりとりできるのですね。

具体的な会話のテクニックについても、すぐに実践できる簡単な
方法ばかりです。たとえば、『自分の先入観をぶつけてみる』とか
『「なぜ」ではなく「どうやって」〇〇したのか、と尋ねてみる』など。
ストーリーを追って読んでみれば、吉田アナの具体的な経験に基づいて
解説されているので、非常に説得力があります。

もっとも興味深かったのは、第3章のコミュ障を救済する実践編。
コミュニケーションを苦手とする一般の方を集め、吉田アナが
やりとりについてレクチャーし、本作のマンガを書いている
水谷緑さんがレポートするという内容。これがねえ、コミュ障を
自覚する人間たちにはあるある行動&言動がてんこ盛りなんですよ。

そして、吉田アナのレクチャーにより改善されていく様子がすごい。
始まる前は、なんでこんな所に来ちゃったんだろう、早く終われよ、
という空気がビシビシ伝わっていた会場が、終わる頃には皆笑顔で
談笑しているんですから!会話が楽しいってすごい!
会話が盛り上がるとなんだかそのメンバーに好感を持てる!
最初の空気は何だったの、というくらいに和やかに終了するという。

ボールを受け取る時は、驚いてみる。
ボールを投げる時は、自分の偏見を交えて返してみる。
そうすると、思いもかけなかった方向からボールが返ってきて、
楽しい会話が発生するのです。言葉を発するほんの少しの勇気と
相手に興味示そう!という気持ちがあれば、コミュ障でも会話を
楽しむことができる。そんなことを教えてくれるコミックエッセイです。

その絶望に浸ることを許してくれる12の物語

絶望図書館 

立ち直れそうもないとき、心に寄り添ってくれる12の物語 』の

イラストブックレビューです。

 

絶望図書館には、世界中のさまざまなジャンルの話が
集められている。せつない話、とんでもない話、どきりと
する話。すべて、絶望した気持ちに寄り添ってくれるものばかり。
今の気持ちにピッタリな話がきっと見つかる。

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『人がこわい』『運命が受け入れられない』『家族に耐えられない』
『よるべなくてせつない』など四つのテーマのもとに、児童文学から
純文学にミステリ、エッセイまで、選りすぐった物語たちが
バリエーション豊かに掲載されています。そして、それぞれの物語には
どのような絶望なのかを短いタイトルをつけて示しています。

アンソロジーという方式は、選者の好みを押し付けられているような
気持ちになり、あまり好きではありませんでした。
先入観を持つことを恐れている部分もあります。
なるべく自分自身が本を読んだ時の気持ちを素直に感じたいのに、
物語の選者の思いを先入観として受け入れてしまうのでは?
などと思うことがあり。ことに物語に関しては自由な気持ちで
読み始めたいのです。

そんな、アンソロジー苦手と思っていた自分の感想は素直に『おもしろい』。
まずは児童文学から、三田村信行の『おとうさんがいっぱい』というブラックな
お話でガッチリと心を捕まれ、次に筒井康隆の『最悪の接触 ファースト・
コンタクト』というSFショートでおかしくも悲しい気分になり…。
掲載順序に気を使っているのはもちろんのこと、それぞれの作品についた
頭書きがいい。『人に受け入れてもらえない絶望に』『どう頑張っても
話が通じない人がいるという絶望に』『夫婦であることが呪わしいという
絶望に』…など、頁をめくるのにドキドキしてしまうような頭書きなのです。

図書館であるという設定で、各章が第一閲覧室、第二閲覧室…となっている
のも面白い。自分の好みだけでは手に取らないような作家さんや物語たちで
あることも良かった。思いっきりアンソロジーの恩恵受けていますね。
今日から意見変えます。アンソロジー万歳!

それにしても、絶望には実に様々な種類があります。
本書は絶望している人も、そうでない人も、いっしょに浸ることのできる
良書だと思います。人に理解してもらえない、心の奥でグルグルと
渦巻いている暗い気持ち。それは無理にキレイにしなくていいのです。
時にはそこにじっくりと巻き込まれることが、新たに動けるように
なるための準備期間になるのではないかなと思います。
すばらしい絶望の数々をぜひ体験してみてください。

日本で生きるリアルな「年寄り」像

傘寿まり子 1 』の

イラストブックレビューです。

ベテラン作家、幸田まり子80歳。自分の家で、息子夫婦、
孫夫婦との間で住居問題が勃発。自分の居場所がないと
感じ、1人家出を決意。ネットカフェでしばらく過ごす事に
なったまり子だが。

 

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なんと、80歳のおばあちゃんが主役のマンガです。
年寄りではあるけれど、執筆業も現役だし、身の回りの事は
自分でできる、元気なお年寄りです。
そんな彼女は、息子夫婦と、できちゃった結婚をした孫夫婦の
二世帯と共に生活しています。ところが、まり子を除いたメンバーで
家の建て替え計画を進めている事が判明します。そして、その
案の中には、彼女の部屋がないと想定されている事も。

そこでまり子は家出をしてしまいます。
家族に文句を言うでもなく、ただ、自分の存在が負担になって
いる事が辛かったのです。悲嘆にくれているだけではないのが
彼女のすごいところ。なんとネットカフェで暮らし始めます。

その上、その環境にすぐに馴染み、ネットカフェにあるマンガを
資料として執筆作業にも取りかかります。ものすごく環境適応能力が
高い。そして、作家の能力のひとつである好奇心の強さも、彼女の
行動力を後押ししています。

高齢者は、家族に遠慮しながら肩身の狭い思いをして暮らして
行かなくてはならないのか、生きていて申し訳ない、なんて
思いながら生きて行かなくてはならないのか。
こんなセリフ、いずれ年老いた自分の親が吐いたとしたら、子供と
しては何とも言えない思いで胸がいっぱいになっていまいます。

社会全体が余裕が無い。弱いものは目に映らない。または見ない
ふりをする。そんな、根底に流れる空気を感じながら、まり子は
その流れに逆らって必至に進んでいきます。
自由は孤独。自由は責任。腹を括った80歳のなんとカッコいいことか。

家出したまり子には、猫を飼うことになったり、初恋の方から
同棲を持ちかけられたりと、人生何周目かの盛り上がり見せて
います。高齢者とその家族の切ない想いや、空回りしてしまう心、
社会の高齢者に対する意識や対応。様々なテーマが潜んでいて
若者から中高年まで楽しめ、かつ考えさせられるすごいマンガです。

共感?反感?どっちにして惹きつけられる

寝ても覚めても』の

イラストブックレビューです。

 

謎の男、麦と出会い、たちまち恋に落ちた朝子。
だが、彼は姿を消してしまう。三年後、東京へ移り住んだ朝子は、
麦とそっくりな男に出会う。似ているから好きになったのか?
好きになったから似ているように見えるのか?
そんな朝子の恋の行方は。

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片付けられない。食器にカビを生やす。綺麗な服やアクセサリーが
好き。写真を撮るのが好き。とびきり美人というわけではない。
…と、少々頼りなくて、どこでもいるような普通の女性、朝子の
二十代前半からの十年間を描いていく物語。

陰のある魅力的な男、麦と恋におちた朝子。ふらっと出かけては
何時間も帰ってこない。朝子を守るためには暴力も厭わない。
ちょっと危ない部分を持つ麦ですが、そこには目をつぶり、
周囲からの忠告も耳に入らない朝子は、まさに恋愛ど真ん中。
おとなしそうな朝子ですが、意外と情熱的な部分も見せます。

そんな二十代の恋愛も、麦が戻るあてのない旅に出たことで
終わりを告げます。そして三年後、東京へと移り住んだ朝子。
住む場所、仕事、友人。何もかもが変わった環境の中で、麦に
そっくりな男、亮平に出会います。性格はもちろん違うのですが
どう見ても麦にしか見えない彼に、どうしても惹かれてしまう朝子。

二人はやがて付き合い始めます。月日を重ね、二人の関係も
穏やかに深まっていった頃、テレビ画面の中に、役者として活躍する
麦の姿を見つける朝子。数年ぶりに、大阪時代の友人と東京で
会った時に、亮平が麦と似ている事を指摘されました。こうした中で
朝子が選んだのは果たして…?

朝子という女性は、積極的に前面に出て行くタイプのようには
見えないのですが、そういうタイプがタチが悪い。
亮平と付き合う時にも、職場の女性が亮平の事を気に入ったと
しきりにアピールしていたのですが、それを差し置いて亮平と
交際するに至っています。

ここはどうして付き合ったのかが描かれていませんので、亮平が
一方的に朝子に惚れたのかもしれないし、朝子が猛アプローチを
かけて友人に抜け駆けして交際に至ったのかもしれません。
ここらへんを明らかにしないのが上手いなあと思います。この時点で、
少しもやっとしたものを感じますが、その後の付き合い始めた二人の
幸せそうな様子や、亮平の高感度の高さ具合に、気にならなくなって
いきます。

ラストに向けての展開はええっ!?となります。
なんだこの女は!?とびっくりします。こんな事する女性だった??
と、思いきやそんな女性像をイメージさせる描写はしっかり
外されています。物語の中で流れる大阪弁も、柔らかくて
暖かい雰囲気を出していて、彼女の黒い部分を上手に覆って
いるようです。

朝子に共感するか、それとも反感を覚えるのか。
どちらの男を選ぶべきか、そして自分だったらどうするか?
読み終えた女性は、口々に自分の感想を語り始めてしまう。
そんな力を持った物語だと思います。

君の頭の中の世界を一緒に楽しみたい

春と盆暗 』の

イラストブックレビューです。

 

好きな子ができた。彼女は誰もが認める『いい人』キャラ。
しかし僕は、彼女のとんでもない“頭の中”を知ってしまう。
さえない男子たちが予想外のドラマを生み出す、4編の恋愛物語。

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盆暗(ぼんくら)とは頭の働きが鈍く、ぼんやりとしていること・さま。
まさに盆暗と言える、大人しそうでそんなに積極的ではない、どこにでも
いそうな普通の男の子たちが登場します。
女性たちも、やや大人しめではあるけれど、ちょっとした問題を
抱えているような、でも表面上は全く問題がないような子たちです。

変な客に絡まれてもニコニコといつも笑顔の、バイト先のサヤマさん。
嫌なことが起こったとき、彼女はある妄想をして事態を乗り越えて
いたのだ!どんな内容なのかというと

月面を思い浮かべてそこに思いっきり
道路標識を放り投げるんです

…というものだそうな。
「へ、へぇ〜 そうなんだ…(汗)」と引いてしまいそうなもんですが、盆暗男子は
違います。サヤマさんの妄想について考え、サヤマさんに説明を
求めたりするのです。そして、トラブルが起こった時、彼なりに考えた
行動で、サヤマさんを助けようとするのですが…。

盆暗男子というのは、周囲の人が見落としてしまうような出来事も、
通過してしまうことなく、拾い上げて見つめることができるのかもしれません。

女の子の頭の中に広がる妄想の世界。自分もそこに飛び込んで
一緒に楽しみたい。救い出したしたいとか一段上からではなくて、
あくまでも同じ場所で、同じものを見、感じることを大事に
考えているところがいいですね。

そうした彼らの思いが、絵の中に登場すると、妄想の非現実な世界なのに、
その中にいる二人がとてしっくりとはまっているのです。
こうした妄想の世界の描き方が、また非常に上手い!
こういう世界を漂っているのか!と納得できる情景です。

自分の妄想世界を、盆暗男子と分け合った女子たちは、臍を曲げてみたり、
むくれてみたりしていますが、その後の共有感で一歩距離を縮めて
いく様子が可愛くて、思わずニヤニヤしてしまいます。

不思議だけど、どこか懐かしいような、でも全然知らない世界のような。
そんな世界を中心に、外側にいた二人が、少しずつ近づいていく、
恋愛物語のコミック。その世界観や、妄想女子と盆暗男のピュアな
やりとりが好ましく、何度呼んでも満足度の高いお話です。

ゆとり最強伝説誕生なるか!?

時をかけるゆとり 』の

イラストブックレビューです。

 

就職活動生の群像『何者』で戦後最年少の直木賞受賞者となった著者。
その類稀なる観察眼で、夏休みや就活、社会人生活について
綴るエッセイ集。

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桐島、部活やめるってよ』ですばる新人賞受賞してデビュー。
『何者』で直木賞を受賞し、『世界地図の下書き』で坪田譲治文学賞
受賞。早稲田大学文化構想学部卒業。

そうそうたる経歴を持つ著者、朝井リョウ
ニコニコ動画2ちゃんねる覗き、エゴサーチで自分についての情報を
チェックし、旅に出ればトイレを求めて奔走し、そして痔を患う。

なんとも自由奔放なイメージでありますが、ゆとり世代ど真ん中である
著者自身がゆとりをネタとしていいカンジにいじっています。
早稲田大学の学生として、ダンスサークルで活動し、夏休みは
友人たちと出かけて遊びまくり、就職活動におっかなびっくり
取り掛かります。

楽しそうなことを思いついたら速攻で取りかかる行動力を持ちながら、
気とお腹が弱く、トイレが近くになければ行動も精神も不安定に
なってしまうという繊細ぶりを併せ持つという、強いんだか
弱いんだかよくわからない人物です。

行動力の面で言えば、埼玉県本庄市から早稲田大学大隈校舎(新宿区)
まで仮装して歩くという地獄の100キロハイク、東京から京都まで
自転車で走破する地獄の500キロサイクリングなど、何をやって
おるのかと突っ込みたくなるような事を実践しています。
やろうと決めた瞬間はハイテンションで準備して、前日になるとああ、
トイレとかどうしよううわああ、などと考え込んでブルーになるという。

道中ももちろんトラブルの連続です。トイレ事情も漏れなく記載。
いやホントに漏れなくて良かったですね。自分もお腹弱いから
その気持ち、よくわかります。でも100キロとか500キロとか
自分の足で移動してみようと思う気持ちは良くわからないけれども。
若いってすばらしいですね。さすが早稲田、とか思ってしまいました。
なんか早稲田の人って元気すぎるイメージがあるので。

自身に巻き起こる出来事を、実に軽やかに語ってらっしゃる。
自分を下げて、結果リア充アピールにならないように、細かく
気を使ってもいる…って自分で言っちゃってるよ!
自分を卑下してる、いじけてる、ふざけてる、おちょくってる、
までいかないギリギリのところで品位を保っているというか。
いやらしくない程度で、狙ってないよ、という風に描写して
読者に突っ込ませる頭の良さと、抜群のバランス感覚を感じます。

リアルな若者の日常をちょっぴり覗いて、自分もこんなアホな事
やっていたなあ、いやここまではやんないでしょ!とツッコミを
入れながら楽しく読むことができるエッセイ集です。
自身をここまで晒し、かつ読者を楽しませる作品として仕上げてくる
朝井リョウという作家の文章力、物語以外の部分の描写の上手さ、
そして作家本人のキャラクターなど、あらゆる角度から楽しめる
作品なのではないでしょうか。

ロボットに芽生える家族愛にキュンとする

ロボット・イン・ザ・ハウス』の

イラストブックレビューです。

 

ベンと元妻であるエイミーに、女の子のボニーが誕生した。
イヤイヤ期のぽんこつロボット、タングは「妹」の世話をしようと
張り切ったり、「妹」にヤキモチを焼いたり。そして一家を脅かす
謎のロボットとは。面倒臭くも愛おしい、ロボットと人間たちとの
家族の物語。

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ロボットでありながら学習能力を持ち、感情や思いやりを学んでいく
男の子のロボット、タング。彼なりに小さな妹、ボニーをお世話したい、という
気持ちがひしひしと伝わって来てます。でもハイハイするボニーのスピードに
追いつくことができず、お掃除ロボットの上に乗って移動しようとして
壊してしまったり、なぜか呼び方が「ボニー」と言えず「ボンニー」だったり。
この不器用さと一生懸命さがたまらなく可愛らしくてほほえましいのです。

タングの所有権、動力源、謎のロボットに夫婦のよりが戻るのかどうか…。
次から次へとやってくるトラブルをひとつずつ乗り越えて行くたびに、
彼らの絆が深まっていくのがわかります。

なかでも小さな妹、ボニーの存在がひときわ光っています。
一歳くらいの赤ちゃんは怖いもの知らず。
タングが困るかどうかなんて考えず、思った通りに振舞います。
だからこそ、彼女がタングに向けるまっすぐな行動と気持ちには
胸を打つのです。困っているタングを助けようとする赤ちゃんには
ほっこりします。

そして、本作を楽しませてくれる軽快でウィットの効いた文章は
優れた訳によるものだと思います。さらに、カバーイラストは
一目見たとたん、タングはこの姿以外にないな!と思うほどの
愛嬌のあるロボットとして描かれています。
カバーイラストは酒井駒子さん、訳は松原葉子さんが手がけており、
優秀な日本人スタッフにより、素晴らしく温かみのある、抱きしめたくなる
作品に仕上がったのではないでしょうか。

『ロボットインザ・ガーデン』の続編となる本作。

1作目では、タングのわがままぶりというか意志疎通の困難さ加減に、
主人公のベンと同じくうんざりとしてしまいましたが、その反動なのか、
今回のタングのかわいさがとても強く感じられます。
憎さあまってかわいさ100倍!
あのわがまま坊主がねえ… としみじみするシーンも。

続編ともなるとややパワーが落ちるかと思いきや、前作からさらに
成長したタングと、よりいっそう互いの愛情を深め、子育ての大変さを
学び、人間として親として成長したベンの姿に、胸が熱くなる、
とってもハートフルな物語です。