ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

戦闘シーンがスゴイ。海賊、かっこよすぎ

村上海賊の娘 第4巻 』の

イラストブックレビューです。

村上海賊の娘(四) (新潮文庫)

村上海賊の娘(四) (新潮文庫)


 
 

孫市率いる雑賀党を従え、真鍋一族に戦いを挑むも、
圧倒的な兵数と力量の差に、不利な状況へと追い込まれる景。
そこへ村上一族が登場!いよいよ村上&毛利vs真鍋&織田の
水上での戦の火蓋が切って落とされた!!

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一度はやられてしまったかのように思えた景。
孫市の状況報告を聞いた村上家は、景が生きていることを
確信します。景は、破壊した船から潜水で、敵の船に乗り込もうと
していたのです。しかも、たった1人で。

戦う、と決したその意思を貫く強さはいったいどこから
生まれてくるのでしょうか。景は家のためや、自分のためという
要素は一切なく、仏のために戦い続ける信徒を助けたい、
彼らのために戦いたいという気持ちなのです。
他人のためのほうが、案外戦うモチベーションが保ち続けて
いられるのかもしれません。

村上家は秘伝の武器、ほうろく玉を投入します。
ダイナマイトのようなものでしょうか。この時代、他には出回っていない
武器ですから、真鍋家の船をいくつも沈め、有利に運べると思いきや。
ここで真鍋家の当主、七五三兵衛の銛が活躍。
銛にほうろく玉を結びつけ村上家の船へと投げ返します。
ほうろく玉をのせていた村上家の船に引火して、打って変わって大惨事に。

とにかく、ピンチに陥っても「こりゃすげえ、やるなあ」と
あけっぴろげに感情を出し、腕だけでなく頭もフル回転して
形勢を逆転させるこの七五三兵衛は大した男です。
部下の海賊たちも同様で、かつて顔を合わせた景を見ても
「姫さん、また会ったな 俺が斬っちゃるど」とまあこんな調子です。
でも手を抜くことはもちろんありません。景に斬られても
「あ、斬られてもうた」とこんなセリフ。凄惨な現場のはずが
あちこち吹き出すようなやりとりがあり、緩急のつけ具合が抜群です。

最後は景と七五三兵衛の一騎打ちです。七五三兵衛は景に惚れていましたが
情が絡んで…なんてわけはなく、景を認めたが故に全力で戦います。
満身創痍の2人は最後の最後まで結果が見えず、手に汗握ります。

毛利家や織田家に仕える侍たち、そして、海を中心として活躍し
基本的にはどこかの下に仕えるような気質を持たない海賊たち。
海賊たちの陽気で好戦的な性質と、将軍の下に使える政治的なやりとりを
しながら仕事を続ける者たちの世界観の違いがおもしろく、また戦を通じて
彼らが理解しあう姿にも心を打ちます。

各自が己の信念を持って、戦いに挑む。
景をはじめ、どの人物も非常に魅力に溢れています。
戦いの中に笑いを交え、リラックスしながら挑める西の戦士たちは
相当強かったのではないかと思われます。
中でも海賊たちの陽気さハンパないです。
そのハンパない男たちを惹きつける景は、やはり見た目も中身も
枠にはまらない、スゴイ女性だったのだと思います。
こんな女性の戦う姿を見たら惚れちゃいますよ。

己の弱さを知った女の覚悟はすごいぞ

村上海賊の娘 第1巻』の

イラストブックレビューです。

村上海賊の娘(三) (新潮文庫)

村上海賊の娘(三) (新潮文庫)

   

己の不甲斐なさに家へと戻り、船にはもう乗らぬ、と
決意した景。一方、村上海賊と毛利家は一千もの船で
大阪城へ向かうが、攻め入りはしない。
父からその真意を聞いた景が取った行動とは。

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男たちの家を守るための戦、そしてその最先端に存在する
信長を目の当たりにして、自分が戦に対して単なる華やかさを
求めていたことに、甘さを知る景。
大人しく家に帰り、袖の長い着物を身にまとい、化粧まで
施し、のんびりと過ごしていました。
綺麗にしていれば、そこそこの見た目になるというのもいいですね。

村上家毛利家の船が出て行きながら、攻撃を仕掛けない様子に
景は不審に思い、父親に理由を尋ねます。すると父親はうっかりと
真実を漏らしてしまいます。それは、武田信玄が毛利側に協力する
との情報が入れば攻め入るが、そうでなければ撤退する。
すなわち、大阪城への兵糧入れはしない、とのこと。

家の存続を重視した判断であり、やむを得ない選択です。
しかし、これを聞いた景は怒り沸騰。
家の存続のために、門徒たちは死んでいくのか!
極楽浄土へ行けると思っている彼らの思いを何とするのか!
景は着物を脱ぎ捨て、戦いの場へと向かうのです。
すごいのは景を止めない父親です。

誰もが自分のため、家のために戦わないという選択をも
せざるを得ない中、仏のために戦う彼らを助けたい、
彼らを助けたいという景の情熱を認め、送り出します。
心の底では、腹の探り合いのようなやりとりよりも、
単純な理由で戦うことを誰よりも求めていたのはこの
景の父親だったのかもしれません。

景は味方の船がすべて撤収した後、雑賀党の孫市を説得し、
一族を引き連れ、50艘ほどの船で真鍋海賊に戦いを挑みます。
船の数の上でも、味方が火縄の名手とはいえ、陸戦の経験しか持たない
雑賀党であることも不利な戦です。
当然ながら、どんどん追い詰められていきます。

ここで、景が雑賀党を引き連れ、敵方に挑んだという情報が
村上の船に入り、味方は一気に盛り上がります。
景を助けるために元の道を急いで引き返す村上一行。
毛利家の命令は悪いけど無視するね!だって姫の一大事だからね!
とウキウキすらしている様子(笑)。

戦場を目の前にして引き返すなど、みな仕方のないこととは
思っていても 何とも腑に落ちない、嫌な気持ちだったのでしょう。
そして、海賊どもは姫の一大事とあれば喜んで敵方に飛び込んで
いくのです。景によって海賊たちの血が騒ぎ出す様子がよくわかります。
そして、毛利家すらも、え?そう?じゃあ仕方ないなあと
喜んで援軍しに向かうという(笑)。みんなほんとは戦いたかったのね、
ということですね。そして、皆を動かしたのは景のまっすぐな、
門徒たちを救いたい、という情熱です。

さあ、味方の船は間に合うのか?
景たちは七五三兵衛の攻撃に持ちこたえられるのか。
手に汗握る展開で、次巻に続きます!早く読みたい!

 

変化していく友人と自分と関係と

世界のすべてのさよなら 』の

イラストブックレビューです。

世界のすべてのさよなら

世界のすべてのさよなら


 
 

離れたくなかった。失いたくなかった。
人生は痛みによってそれらしくなっていく。
美大出身の4人の物語。

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会社員として頑張っている悠。
ダメ男とばかり付き合ってしまう翠。
ひたすら絵を描き続ける竜平。
体を壊し、人生の休み時間中の瑛一。
30歳になった彼らは少しずつ、以前と異なる友人の様子や
自分を取り巻く環境、そして友人との関係に違和感を
抱きます。

学生時代に仲の良かった友人と数年ぶりに会うと感じる
違和感てありますよね。価値観が変わった?大切なものの
優先度が以前と違う?
それはきっと相手にとっての自分もそうなのでしょう。
社会人として生きてきた環境がそうさせるのかもしれませんし、
将来がまったく見えなかった学生時代とは違って、なんとなく
自分の行き先というものが見えてきたから、なのかもしれません。

そうした小さな違和感を、それぞれの登場人物において
ていねいに描写されています。
広告代理店に勤める悠は、あんなに心を通わせたと思っていた
瑛一と、距離を置くことに安堵し、結婚相手に対して意識を大きく
寄せている自分を認めます。
結婚相手を選ぶことで、瑛一を斬り離そうとしている自分がいる、
と悠は感じています。そうした、嫌なことを考える自分を自覚し、
認める悠は、まっすぐな考えを持ち、また強い部分を持ち合わせて
いる人間のようです。

ダメ男とばかり付き合う翠は、弱音を吐かない女。
ただ、瑛一にだけは心を許し、時には愚痴ったり、落ち込んだ時には
そばにいてもらったりします。
瑛一とは恋愛関係にはならないようですが、こうした関係が成り立つ
のは、瑛一の他人との距離感の持ち方のおかげなのでしょう。瑛一の、
控えめながらあたたかい支えにより、自分の欠けた部分を彼氏で補う
ことをやめた翠は、次は瑛一の支えになりたい、と心から思うのです。
瑛一を頼る立場から、支える立場になりたい、と思うようになったのは
翠がこれまでの弱い自分に決別したとも言えるでしょう。

画家への道をひた走る竜平は、バイトをしながら制作を続けています。
絵の制作受注を受け、制作に取り組んでいく際に、自分の子供の頃を
思い出します。
そこで言葉少なに交わしたのを最後に、会わなくなってしまった女の子と
今になって連絡を取ります。それは当時の自分と彼女だから共有できた
ものを再確認し、失っているから得られるものを発見した瞬間だったのです。

そして、瑛一。この4人の友情は瑛一を中心としてまわっているようです。
誰とでも一対一で接することができる瑛一は、自分の弱さをさらせば人は
去っていく、と考えていたため、聞き役に徹しています。
以前会社を辞めようとした時に、悠の心配をはねのけるような言動をして
しまったのもそうした考えからでした。
いわば、自分の保身のために聞き役に徹していた自分を忌み嫌っていた様子。
でも他の3人はそんな瑛一に助けられていること、そして、今度は瑛一の力に
なりたいことを示すのです。

学生時代、未来が見えてこない、という意味で同じ方向を向いていた仲間が
それぞれ違う方向へと目を向け、歩き出す。
それは、これまでの考え方ややり方を捨てるような、一変したやり方かもしれません。
仲間や価値観、これまでの環境と離れて新たな旅立ちを目ざすのは、世界の
すべてさよならするような感覚でもあるでしょう。
でも切れるわけではなく、その関係性は太くなったり細くなったりしながら
続いていく、そう思えるし、思いたいのです。

一時的に失ったり、形を変える大切な友人との関係。
その関係性をベースに次の自分が作られていく。
そんな容赦ない事実に、ちょっぴり切なさを感じる友情物語です。

違いは夫婦をこんなにもおもしろくする

北のダンナと西のヨメ 』の

イラストブックレビューです。

北のダンナと西のヨメ

北のダンナと西のヨメ

 
 

 

そこらへんを鶴が舞い、シカとしょっちゅう事故る北海道。
死ぬほどうるさいバスの中、おばちゃんが飴を仕込むコテコテの地、
関西。漫画家夫婦の当たり前に戸惑い、身悶える県民性コミックエッセイ。

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北海道は釧路出身のダンナ、兵庫県は神戸出身のヨメ。
環境、生活、文化、言葉…などなど、たびたび発見する違いに
驚き爆笑!してしまいます。

特に北海道については、釧路と函館間が500キロメートル、
釧路と旭川間も300キロメートル以上など、道内距離感がすごい!
数100キロも離れている場所に行くなんて、車だと何時間かかるのかな?
想像もつきません。道内移動についでなし!なるほど…。

一方の関西では在来線の電車に乗って1時間もすれば他県に入れるという。
こりゃあ京都のついでに大阪、神戸もありな状況です。
関東もわりとそんなかんじですよね。やはり北海道はでっかいどう。

食べ物はどうでしょう。
いくらなどの魚卵はふりかけ感覚でドバドバかける道民。
これは新鮮な魚卵が安く手に入るからですよね。うらやましい。
神戸はカレー、肉じゃがなどの肉料理は牛肉を使用することが
多いとか。へえぇ〜、ですね。やはり神戸牛の産地だから?
それぞれ実家に美味しいものがあるというのはいいですね。
またジャンルが違っているのがいい。2倍楽しめます。

漫画家夫婦であるからか、その違いはネタとして大いに
役立ち、なおかつ夫婦で楽しんでいる様子が伝わります。
相手の大事にしている面は認めて、時には譲り合い迎合し。
出身の異なる2人が出会ったからこそ、それぞれの生まれ育った
環境が融合した新しい暮らしがはじまるのです。
そしてその違いが、相手への理解を深め、距離を縮めるアイテムと
なるのです。

パートナーの背景丸ごとおもしろがり、尊敬している様子が
伝わる、おもしろ県民性コミックエッセイです。

世界を覆す 黄金の液体と少年たち

 14歳のバベル

イラストブックレビューです。

 
 

 

病院へ運びこまれた冬人は、夢うつつの意識の中で不思議な

光景を見る。見たこともない建物、変わった服装。彼らは何者で、何をしようとしているのか。地上消滅のカウントダウンが始まる。

 

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日本で八年前にバイオテロが発生。この事件をきっかけに、日本全国各所に立入禁止区域ができました。人々は居住可能である都市部へと移住します。
携帯電話、インターネットなどの通信機器が使用禁止となり、人々は携帯を持たず、固定電話で会話をし、文書は全て紙に手書きをし、押印。そんなひと昔前の状況になったような日本が舞台です。

 

主人公は14歳の少年、冬人。八年前の事件をきっかけに、人混みに出ると気分が悪くなって嘔吐したり、気絶する、という症状が出るようになりました。学校へ行ってもほぼ一日中保健室にいる。そんな冬人を母親が神経質なまでに心配しています。

 

冬人はある日、街中で気を失い、気がつけばある病院の診察の

ベッドの上でした。朦朧とする意識の中で冬人の脳裏に浮かんだ景色は、見たこともないような施設と、そこにいる不思議な衣装を身に纏った人たち。夢なのか何なのか、判別のつかない冬人でしたが、彼らのことについて調べて行くうちに、とんでもないことが判明したのです。

 

それは、彼らが地下に住む古代シュメール人の末裔であり、地上に住む者たちとの入れ替えをはかっている、ということ。その壮大な計画を知った冬人はこれを阻止しようと動き出します。しかし、学校生活になじめず、母親にもはっきりと意見を言えない冬人には、少々荷が重い。

 

この地上消滅計画には、冬人の父親が勤めているビール会社のビールが大きく関連しています。冬人の父親も会社の施設に違和感を感じ、やがて冬人や、記者の鷹野と共に、この計画を阻止するべく動き出します。14歳という、微妙な年頃は、周囲の

状況が見えるようになり、自分の無力感を強く感じる時期なのかもしれません。


それは大人にとっても同じこと。

経験値が少し余計にある分、振る舞い方はわかるけれども、成長し続ける自分の子供や、予想外に発生した未知の出来事に対しては、少年と同じように無力な部分もあるのです。そうした無力な大人の姿を見せることも、少年の成長に関係するのかもしれません。

 

想定外の出来事に対して向かっていける力の根底は「愛」。
少年は、希望を感じられないこの地上だけれども、大切な人たちを守りたい気持ちで強い大人たちへと向かっていきます。冬人の父親も、記者の鷹野も。


大切な人たちがいて、その人たちを守るために己を奮い立たせているのです。冬人がこの世界を守ると決めた瞬間、世界は彼を応援するかのように動き始めます。壮大な設定と細やかな少年の心理とが美しく、その世界にグイグイと引き込まれる物語です。

 

キッズファイヤー・ドットコム  』の

イラストブックレビューです。

キッズファイヤー・ドットコム

キッズファイヤー・ドットコム

 

少数精鋭、短期決戦をモットーとするホストクラブの店長、
白鳥神威。いつものように仕事を終え、歌舞伎町から帰ってくると
玄関の前にいたのは見知らぬ赤ちゃんだった。

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母親に心当たりはないが、育てることを決意した神威は
IT社長の三國孔明と共に、クラウドファンディング
赤ちゃんを育てることを思いつきます。

子育ての費用をクラウドファンディングで募る。
ものすごい発想ですね。
具体的には赤ちゃんの成長を動画で見ることができる権利、進学について決定する権利、
思春期に説教する権利など赤ちゃんの人生に介入する権利を買うことができるというものです。

他人に、しかも何人もの人に自分の人生を握られてしまうなんて。
しかも自分のプライベートを切り売りされてしまうなんて。
 と、子を育てている親としては考えます。
ですが、子どもが欲しくても持つことができなかった人はどうでしょう。
孫が欲しいけれども、期待できない場合はどうでしょう。
身寄りがなく、1人で寂しく暮らす老人はどうでしょう。

養子を取ることもできないけれども、小さな人生に寄り添って
その未来を見てみたい。そんな需要はあるかもしれないなと思ってしまうのです。
それともうひとつ気になることあります。クラウドファンディングが成立し、
この赤ちゃんが多くの人に晒されながら成長すると、どんな人間になるのか。
どのような考えを持って行動するのか。
親や、親の愛情についてどう考えるのか。
倫理観はどうか。
その疑問は、第2部で解決してくれます。赤ちゃんが6歳に成長し、
活動する姿を見せてくれるのです。この構成は読者の期待に応えて
くれていてうれしいです。

子育ての出資を求む、という一見突拍子も無い企画を実行するのは
売春婦の母を持ち、親に愛された記憶を持たない神威。
彼は愛というものを信頼していませんが、現れた赤ちゃんに対しては
自分に対する試練だと理解し、解決しようと努力します。
素晴らしいのは、クラウドファンディングを思いついた時に、
お金儲けのために赤ちゃんを利用しようとしていないこと。
このシステムを利用することで、母でなくても、親戚でなくても、
若くても老人でも誰でもフラットに子育てに参加できる、と考えたのです。

「母親は苦労して子育てするもの」とか「子どもいない人は半人前」とか
いろんな先入観が溢れる世の中で、そんな思い込みに縛られずに
子どもという存在を近くに感じることができる。そうした仕組みを
提供したのかな、と思います。子どもを育てることに対しての「○○せねばならない」
という考えを取っ払い、子育てと直接関係のない層を取り込み
多かれ少なかれ自由に子育てに参加できる。

やり方は突飛。でも頭ごなしにダメだろ!と言えないのは
育児の先入観に対して不満を感じる層が多くいるからではないでしょうか。
これを企画した神威本人はきちんと育児していますし、収入も
あるのでファンディングに頼って生活しているわけではないのです。
とはいえ赤ちゃんのプライヴェートや人権侵害に当たるのでは?
という疑問も起こります。まさにこのクラウドファンディング
さまざまな議論を巻き起こす、子育て界における「大型爆弾」と言えるでしょう。

登場人物のキャラも立っていますし、ネットを利用した事業展開やSNSでの拡散など
内容も今という時代ならでは、というものでインパクトがあります。
ところどころホスト文化を学べる(?)部分も登場して、楽しく読み進める事ができます。
そして、読み終わった後で「子育てってなんだ?」「国が、自治体が、自分が子どもを
育てるってどういう事なの?」と考えさせてくれます。世代や立場によって読後感が
変わると思われますので、いろんな人にオススメして、感想をシェアすることをオススメ
します。

 

「おいしい」と「思い」はリンクしている

ごはんのおとも』の

イラストブックレビューです。

ごはんのおとも

ごはんのおとも

 

 

路地裏の料理店ひとくちやに集まる人たちを、心まで
あたためる8つのレシピ。

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たまごの黄身のしょうゆづけ、しそみその焼きおむすび、
なすの浅漬け、セロリのじゃこ炒め、とりそぼろ…。
ごはんのおともにまつわる登場人物たちの思いを
10ページ程度のマンガで紹介し、レシピもイラストを用いて
紹介しています。

独身のサラリーマン、上京してきた女子大生、旦那さんを
亡くしてしばらくたつおばあさん、幼稚園に通う女の子。
年齢も性別もさまざまな人物が登場し、日常を過ごす中で
おいしい食べ物と、その時に感じる彼らの思いをていねいに
表現しています。

やわらかいタッチはひとびとの優しさを感じさせますし、
暖かく落ち着いた色合いは、食べ物たちとても美味しそうに
時には香りまで漂ってくるように見せてくれます。
特にご飯の王道と言えるような茶色い食べ物(たまごの黄身の
しょうゆ漬けやなめたけなど)が、ほかほかの白いご飯の
上に載っている様子といったら!この絵を見ただけで
おかわりー!と言いたくなります。

おいしいごはんを食べる人の表情は、幸せに満ちています。
そうした表情を見せることでそれを作った人にも幸せを分けてくれるのです。
「おいしい」は、作る人と食べる人、互いの思いがリンクして
成り立つものなのだなあ、と感じさせてくれるおいしいコミックです。