ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

「気合」と「愛」で作る家族のごはん

ぬおお飯』の

イラストブックレビューです。 

ぬおお飯

ぬおお飯

 

 イラストレーター、きくちいまさんが
7人家族のごはんレシピをイラストエッセイで紹介。

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仕事に家事に子育てに、忙しい毎日を過ごすお母さん。
家族の健康のためにも、なるべく食事はちゃんと作りたい!
でも時間がない!!!

こんな状況のお母さんはたくさんいらっしゃるかと思います。
私も仕事をしていた頃は、保育園にお迎えに行って帰ってきて
30分でご飯にせねば!!とまさに『ぬおお』という気合いで
夕飯の支度をしていました。

きくちいまさんも、そんな働くお母さんの1人。
自分のご両親、旦那様、きくちいまさん、子供が3人と合計7人家族。
この7人分の食事を毎回作るのですか… スゴイ。
5人分でかったるいなーとか言ってる場合じゃないですね。

こちらはSNSでの発信内容を本にまとめたもの。
ツイッターやブログから本になったものは、時が立つとあまり興味を
感じなくなることが多いので、あえて手を出さないようにしていました。

しかし、この本はまずタイトルに惹かれ、中身をパラパラめくってみて
食と食材と家族への愛に溢れている本だなあと感じました。
レシピやコミックエッセイは『なんども手にとって繰り返し読むのか?』
というのが自分の購入基準なのですが、これはバッチリ!

おかず、野菜もの、ごはんもの、小さいおかず、スイーツの
5つのカテゴリに別れています。
食材がかぶった、食材が足りないから何かカサ増しを…
など、楽しい家族のエピソードとともに紹介してくれます。
37000人ものひとがお気に入りしたという、伝説の
レンチンクレープレシピも!

子供の頃、母親が『材料なくてあるものだけで作ったんだよ』
と言って出してくれたごはんがおいしくて、『いつか作ってくれた
やつ、また作って!』てねだったら、母親も覚えてなかったっていう。
そんな昔の事を思い出したりする、ほっこりごはんレシピ集です。

芸術の女神に愛された者たちの日常とは

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常』の

イラストブックレビューです。

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

最後の秘境 東京藝大:天才たちのカオスな日常

 

 芸術界の東大。それが『東京藝大』。
その内部に作家が潜入したルポルタージュ
芸術家たちのカオスな日常が明らかに。

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狭き門をくぐりぬけ、芸術を学ぶべく訪れたその世界は。
工場のような広さを持ち、あらゆる器具が揃った作業場。
工業、木工、絵画など学部も多岐にわたり、その作品たちも
一言で表せないような、独特なものも多い。

学長いわく、『日本の芸術は君たちが牽引していくのだ』そうで
そういう意味では先駆的な取り組みも珍しくないようです。

個人的におもしろいなあと思うのは、その期待を裏切らない
変人ぶりを発揮している方が多くいるということ。
『作り出す』ということがイコール生きる事につながって
いる。創作と社会的に生きる事は必ずしも一致していないというか。
作ること、表現していくことを突き詰めていくと、社会的活動は二の次になる。

一方で冷静に将来を見据えて、在学中から活発に活動している
学生たちも多数いるという事実。これは音楽に取り組む方に
多いようです。音楽の道へ進む人たちは、学生のうちに勉強だけでなく実践の場を
こんなに経験していくものなのだということをはじめて知りました。
それに関わる活動にお金もかかるし、その見た目の華やかさの影で
一日休むと取り返しがつかないため、毎日の練習を欠かさない
努力を続けているということも。

それから学部の多さや、その先にある仕事の種類の多さについても驚きました。
本人やお子様で芸術方面に才能がありそうだ、興味があるという人は
ぜひ読んでみてほしいです。芸術の世界は奥も深いが幅も広い。

芸術に興味がない人でも、軽妙なタッチで描かれたおもしろおかしな
登場人物たちや、一般大学とはことなる構内の様子は充分に楽しめます。
幅広い年代に楽しめる、良書だと思います。

激流の中でも決して自分を見失わず

 

『あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)』の

イラストブックレビューです。

あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)

あきない世傳金と銀〈2〉早瀬篇 (ハルキ文庫)

 

 

店の立て直しをはかるため、女衆でありながら
店の若旦那と14歳で結婚することになった幸。

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店のお金まで使い込み、店を傾けさせてしまう若旦那。
女衆あがりが、という周囲の目線にめげることなく、
自分のやることは商品の知識を得ること、と前を向いて
真っすぐにすすむ幸。

結婚とはいえ、傾きかけた店で決して恵まれた状況とは
言えません。その中で長く会えなかった母と妹が式の
ためにやってきて再会し、良かったと涙を流すシーンには
こちらも思わずもらい泣き。

純粋に娘が幸せで良かった、という喜ぶ母。綺麗な姉を見て
憧れる妹。ここでキッパリと生まれた家と決別したというか
はっきりとした溝ができたように思います。
あちら側とこちら側、といったような。

それは幸が自分の生き方に覚悟を決めたから。
逃れられない状況ではあるけれども、『あきらめ』ではなく
自分で選んだのだ、という意思を持つところがすごい。
だからこそ、その後に起こる出来事にもくじけることなく向かって
いけるのでしょう。

14歳から16歳という、女性としても次第に花開き、変化して
いく時。幸にとっては未知の世界へと踏み出していくことに
なります。

第1作に続き、幸が精神的にも身体的にも成長している姿が
しっかりと感じられることがとても嬉しく感じます。
第2作の今回は、最悪の事態は免れたがまだまだこれから
波乱が巻き起こる予感を感じさせる終わり方です。

江戸時代の大阪の商人、という全く馴染みのない環境に
これだけ共感できるのは、やはり作者の腕なのかなあ、と
思います。この作品とは長い付き合いになりそう。
そんなうれしい予感がします。

 

 

えんえんと、ダラダラと至福の家呑み

ゆるつま: 今夜はうちで、ゆるゆる晩酌』の

イラストブックレビューです。

ゆるつま: 今夜はうちで、ゆるゆる晩酌

ゆるつま: 今夜はうちで、ゆるゆる晩酌

 

 

思いついたらすぐに、気楽に作れる、
カンタンだけど、ちょっぴり気のきいたつまみが90品!

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家呑みの最大のメリットは、ゆっくりと自分のペースで
飲める事。足元が多少おぼつかなくても、こぼさず注ぐことが
できればいつまでも飲んでいられるのです。ああ幸せ。

まずは豆苗のしゃきしゃきサラダ、豚バラソテーのゆずこしょう
ソースをぐいっとビールで!!
おなかが満たされたらペースを落として明太豆腐ディップと
アンチョビ白菜でちびちびと白ワインを。
もうおしまいにしようかな~と迷いつつ、最後に黒こしょう
バニラで赤ワインをゆっくりと一杯。

あああ たまらず飲みたくなってきた(笑)。

多くのメニューが切ってあえる、切って炒めるといった
簡単な工程でささっと作れます。
それでいておもてなしにもOKな「使える」メニューが
多いです。

巻末には、お酒の種類別おつまみメニューの索引が。
これがまたいい。このつまみをあの酒で…
と想像するだけで幸せ。

特に、日本酒に合うつまみが個人的にツボで
本当においしそう。なのに悲しいかな、日本酒は飲めないのです。
でも歳とったから体質変わったかしら?
ちょっと試してみようかな。でも意外とおいしく感じて
飲む量が増えても困っちゃうな…

そんなうれしい悩みも出てきちゃったりする、
なかなかにくいヤツなのです。
とりあえず今日はスパークリングに合うメニューで
行ってみよ~っと。

 

人工生命体の異変は何を示唆するのか

風は青海を渡るのか?

The Wind Across Qinghai Lake? (講談社タイガ)』の

イラストブックレビューです。

 

聖地。チベット・ナクチュ特区にある神殿の地下、長い眠りについていた
試料の収められた遺跡は、まさに人類の聖地だった。
ハギリはヴォッシュらと、調査のために再訪。
トラブルに足止めされたハギリは、聖地以外の遺跡の存在を知らされる。

 

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人口生命体「ウォーカロン」シリーズ第3弾。

人口生命体の異変はいったい何を示唆するのか。
人工知能に現れる異常な事態は何故起こるのか。

ここで、驚くべき事態を、聖地ナクチュの近くで
ハギリ博士たちは発見します。

ハッキリ言うとネタバレになってしまうので
ぼかしますけれども、その発見した出来事というのは
人間と人工生命体の新しい関係を示すもの。
それと同時に、人間と人工生命体の区別をあやふやに
することでもあります。

生命への尊厳や価値観も、数百年生きる事が
できる人間とそうでない人間とではまるで違ってきます。

長く生きれば、何故生きているのか、何のために
生きているのか、あやふやになってくるのも無理はありません。
かえって人工生命体のほうが、そういったことを考えない分、
苦しく感じることはないのかもしれません。

体を維持することで「生きる」ことと、思考や意識の上で
「生きる」ことの違い、そして考えることでどうなるのか、
考えないことでどうなっていくのか、そんな命題を常に
与え続けられる物語です。

内容を伝えることはできるのですが、感想を人に伝えるのが
非情に難しい。これを読んだ後に哲学の本も読む必要が
あるように自分は感じました。もちろん、科学エンターテイメント
としても充分楽しめますよ!

  

「誰とでも」話せるって、大人でも難しい

誰とでも15分以上 会話がとぎれない! 話し方

そのまま話せる! お手本ルール50』の

イラストブックレビューです。

 

誰とでも15分以上会話がとぎれない話し方。
そのまま使える「お助けフレーズ」のみならず、
はずむ会話の具体例をたっぷり紹介。

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仕事をやめてから人間関係がガラリと変わりました。
新たに幼児のお母様方と接する機会が増えました。
さて、そこで困った事態が発生。
何を話していいかわからないのです。

仕事の時は、会社の状況やプロジェクトの進捗なんかを話題にしていれば
あっというまに小一時間は経過します。

お母様方との会話については、会社の状況とは家庭の状況を示し、プロジェクトの
進捗については子育ての進捗をあらわします。

初対面の相手に対して御社の状況は、と聞く事はできます。
ある程度ホームページで公表されてるしね。

しかし初対面のお母様に対して、家庭の状況なんて聞けないでしょ?
自分だって初対面で家庭内で問題ない?とか聞かれたら、
はあ?なんですかアナタ、とか思いますし、、

なので無難にプロジェクトの進捗状況、つまり子供があれこれできて
すごいですね、あるいはここが可愛いですね、と褒めるのが吉。

しかし、もともとあまり子育てに熱意を持たず、上の2人は保育園に
全面的に育ててもらったため、自分は子供を褒めるスキルが非常に
低いのです。我が家の家庭内に関しては夫や義母などの褒め上手な
皆様に囲まれているので問題ないですが、末娘と私の2人で出かけたら
そうはいかない。

はて困ったなあと思ったところで出会った本書。数年前に話題となった
ものの、今回は実践編に焦点を当てています。
具体的な事例が掲載されているのでわかりやすい。

こちらがある程度情報を開示してから相手に問う、とは会話の基本でありますが深く納得。

自分はいわゆる表面だけの会話を苦手としているのに、相手に対して
突っ込んだ話はしない、という難しい条件の中、自分の事は少し突っ込んで話す、
と示してくれるのには納得がいくのです。

環境が変わって会話に悩む人、コミュニケーションの方法として会話というツールを
使いこなすのに役立つのではないでしょうか。自分もたまに本書を開いて、うんうん、
と頷きながら読んでいます。

英国一家、西日本で食べてみた

コミック版 英国一家、日本を食べるWEST』の

イラストブックレビューです。

コミック版 英国一家、日本を食べるWEST

コミック版 英国一家、日本を食べるWEST

 

 

『英国一家 日本を食べる』コミックの西日本編。

京都の生麩や懐石料理、大阪が誇る庶民の味、
下関のフグ、沖縄の宮廷料理まで様々な味にチャレンジ!

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東日本編に比べて、失速感があるのは仕方がないのか。

東日本は焼き鳥や焼き蕎麦、天ぷらなど、わりと
外国の人でもとっつきやすそうな食が紹介されていたが、
西日本ではフグやサザエ、ウミヘビ(!)など、日本人でも
好みが分かれるような、各地域での伝統的な食を多く取材されています。

そのせいか、やはり敷居が高かったのかな?

著者にとっておいしい!と感じられるものは前回よりも少なかった印象。
東日本である程度日本食の認識を高めたために、より日本的な
食を試してみようと思ったのでしょうか。

それにしても、さばいた後のフグのキモに指をつけて舐めてみるとか
(毒があると知ったうえで!)ダメでしょ。
事なきを得たから良かったものの、冗談では済まされない。

著者のマイケル・ブース氏は、こういった子供っぽい所を持ち合わせていて、
東日本編ではお茶目でユーモアある人のように映りましたが
今回は受け付けませんでしたね。
フグを調理する方も、油断できませんね。まったく。

他にも、心霊体験したり、お子さんが身体的トラブルにあったりと、
マイナス要素が全体的に強かった。
それと、食自体よりも、その食事をする際に起こった出来事のほうに
焦点を当てているようで、消化不良。食自体の文化的意味への感想を
もっと聞きたかった。

東日本に比べて楽しい要素が少なかったために、読後感は今ひとつ。
ただ、元気盛りの子供たちを連れて、日本各地を巡ったことは
素直にすごいなあと感じます。

そして、日本の食文化をジャーナリストの目線で子供達や読者に
伝えてくれたこと、そのようにして日本の食文化を広げ伝えてくれることは
非常にありがたいことです。

自分の子供たちに日本の食文化とは、と説明するにも役立つ一冊に
なってくれたと思います。