ぬこのイラストブックれびゅう

ぬこのイラストブックれびゅう

雑読猫、ぬこによるイラストブックレビュー。本との出合いにお役に立てれば幸いです。

孤高の外交官ヒーロー現わる!!

ローマ入りする外務大臣を警護せよ。

特命を受けた外交官・黒田康作在イタリア日本大使館に着任早々、
大使館に火炎瓶が投げ込まれるという事件が発生。

そんな折、母親と観光に訪れた日本人の少女が誘拐され、黒田は
母親とともにアマルフィへ向かう。

周到に計画を遂行する犯人の真の狙いとは?

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織田裕二主演により、フジテレビ開局50周年記念作品として
2009年に映画公開。

先に出演者と舞台(アマルフィ)が決まり、真保 裕一氏が
企画制作に加わったという流れだそう。

映画化された後に、小説として発表されました。

当時は大好きな作家さんではあるけれども、フジテレビ制作の映画と
いうことで、ドラマのような仕上がりなのかな?と
映画を見ることもなく、後から出た小説にもしばらく手を
出さずにいました。

しばらくたち、自分の中で宣伝されていた映画のイメージを払拭できたかな~
と感じたのでようやく購入。
先入観を持って作品を読みたくなかったので。

主人公の外交官は格闘術とライフル射撃の名人。
え 警察じゃないの?というか外交官でこの経歴ってなに?

と、その経歴だけでも興味深々。

外国において、その国の法律と、外交官という立場を利用して
ギリギリのところで立ち回る姿、そして時にはいやらしいくらいの
やり方で、相手と取引をしたりします。

それは各国で仕事をしてきたからこそ身に着けた、いわばスキル。
それにしてもその度胸には舌を巻いてしまいます。

外交官という仕事の内容についてもしっかり描写されてます。
パスポート無くした人のために、デスクワーク中心に
仕事してるのかな、なんてイメージでしたがとんでもない。

海外で起こる邦人がらみのトラブルには常に第一に駆けつけ
最適の処理を施さなくてはならないのです。

機転と体力・知力が備わっていないとやっていけない仕事。
そしてそこに、役人らしく組織から圧力を受ける事も。

一匹狼の体でありながらも、外交官という立場上、やはり
組織の一員。
上手に立ち回るどころか、時に手段を選ばす強引に解決へと
進める姿は、やはりヒーローであり、かっこいい。

別の国では、どんな手法でトラブルを解決していくのか。
これからの彼の活躍に期待したいです。

 

 

アマルフィ 外交官シリーズ (講談社文庫)
 

 

 

 

 

飲めば飲むほど冴えわたる 酩酊探偵の謎解き劇

呑むほどに酔うほどに冴える酩酊推理!

続発する奇妙な事件を、屈指の酒量で解く本格推理の快感!

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やたらと酒が強い主人公。
「肝硬変を通り越して肝臓が破裂するほど飲む」
とは、うらやましいというよりは、何と言うか
もったいないからもう飲むな、と言いたい。

やたらと飲むからといってくだを巻くわけでもなく
普段からもの静かで、それは飲んでも変わらない。

それでいて出てくる推理はすっきりと整っていて
心地よい。

このような人物は飲み会にいると非情に好ましいので
近くにいたらぜひ誘いたいところ。

現場にいる、というよりは酒場で、人の家で、
酒を飲みながら解決することが多いミス・マープル
ような「ゆり椅子探偵」に近いのかもしれない。

彼を取り巻く人物は、騒がしく飲む豪傑な先輩や、
誰もが振り返る超美人のお嬢様など一癖も二癖もある
者ばかり。

その人物たちとの化学反応ぶりも楽しく、主人公の地味な様子を
いっそうひきたてている。

日常に起こるようなささいな出来事を、酒を飲みながら
ああだこうだと話し合う。
大概は「まあそうかもね」で終わって結果はわからないのだけど
正しい結論を出してくれるのは気分がいいものなのではないだろうか。

ただし飲みすぎていたら、その結果も覚えてないかもしれないけど。

 

 

謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)

謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)

 

 

女、50代。新しいステージの始まりです!

50代を目前にした女性。ある日、自分の心と体の状態が
「なんか変だな?」と気づきます。
診療内科、ジム、エステなどに通い、専門家の知識を学びながら、
明るい50代の過ごし方を探していく模様をコミックで紹介。

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50代まであと数年。どんな不調が現れるのかな?と
予備知識を得るつもりで手に取った本。

女性にとって50歳前後というのは、子供たちが大きくなり
物理的手間が減る、夫や自分の親の介護がある、仕事面では
実務よりも責任面が大きくなる… など精神面、体力面ともに
大きな負荷がかかってくる頃。

40代までは何とか気力と体力をフル稼働してやってきたけど
身体は正直。50代からは『無理はきかないよ~』と身体が
サインを出してくるようです。

自分としては歳を重ねるにつれ、『人は人、自分は自分』という考えが
どっしりと定着してきたように感じます。

でも、老化(とは言いたくないけど)については『仕方がない』と
あきらめずに、自分なりに努力をしていきたい。
努力をすることで、自分に達成感、満足感を与えて、
『まあ 美人ではないけどわりといけてるよね、自分』と
思える50代を過ごしたい。そんな風に感じさせてくれた1冊でした。

 

 

50歳前からのココカラ手帖 (Sanctuary books)

50歳前からのココカラ手帖 (Sanctuary books)

 

 

男たちの熱さと冷たさが交錯する

殺人事件の時効成立目前。現場の刑事にも知らされず、
巧妙に仕組まれていた「第三の時効」とは?
刑事たちの生々しい葛藤と、逮捕への執念を鋭くえぐ
る表題作ほか、全六篇の連作短篇集。

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どこまでも非情に、冷徹に犯人を追い詰めるのは
公安出身という異色の経歴を持つ刑事。
人間としての感情があるのかも疑問が残る行動、
そして何も映さないようなその目つきには背筋が凍るよう。

彼が仕組んだ第2の時効後の罠、そしてその罠にかかる
新の犯人とは。
その罠は第2の時効が切れるその瞬間までわからない。
これがまた周囲の刑事をはじめ読者をヤキモキさせます。

そんな冷徹な刑事が一瞬、人間らしさを見せるとき。
そこにわずかばかりの安心感を感じるのです。

一方、彼の部下である刑事は、人間味溢れる人物で、事件周辺の
人物の面倒を良く見たり、同情したりします。

この対照的な二人のやりとりが、より状況を浮き上がらせ
物語に光と影を作り出しています。

短編集でありながら、全編にわたって刑事個人の
能力のぶつかりあい、犯人逮捕へのピリピリとした
緊張感が漂い、ずっしりとした読み応えがあります。

刑事たちの仕事に対する「熱さ」と「冷たさ」が
物語に温度を与えているのです。
まさに「警察小説の最高峰」ですね。

 

 

第三の時効 (集英社文庫)

第三の時効 (集英社文庫)

 

 

そうだったのか!日本のしくみ

ニュースを見ているだけではよくわからない。
そんな日本の政治を、気鋭の新聞記者が
笑いを交えて、わかりやすく解説。
コミカルなマンガと、テンポの良い説明で
政治のイライラモヤモヤもスッキリ!

 

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消費税に年金、エネルギー問題。

ニュースで結果の一部分だけがわかるけど、原因は?
経過は?そして今後の課題って?

2012年の出版で、当時は民主党が政権を握り、首相も
コロコロ変わっていた時期。震災から半年後でもあり、
各地で原発に反対するデモが行われるなど、日本中が
不安になっている状況。

消費税の10%への増税は当初の2017年実施予定から
2019年10月へ延期となったようです。

消費税増税における当時の言い分としては、海外向けには
「消費税UPして借金減らすよ」国内向けには「消費税UPして
年金出すよ」と。
どっちなんだよ!というツッコミが入りますね。

民主党はいろんな党と合併・吸収してできた党でなんと綱領がないそう。
党として「こういう政治をしたい」というベースがないってことなのです。

組織内がバラバラであるため、主張も一貫しないことがある、
という説明を読み、なるほど~と感心。
確かに発言も行動もなんだかチグハグな様子でしたよね。
ちなみに野田さんが首相でした。覚えてますか?

イギリスは消費税20%なんだとか!
そのかわりに生活用品など、優遇されるものも数多くあります。
でも日本は?10%は一律なの??

まずは政治に興味を持ち、情報を集める事。
関心を持つ事が大切であると本書は訴えます。

とはいえ、最初の一歩がなかなか出ないもの。
マンガ担当のほうの著者は、政治は詳しくわからない、
けれども子供たちのために、日本の未来は気になるという
非常に身近な立場で、政治のしくみを解説してくれます。

日本の政治の仕組みを学ぶための、最初の一歩としては
非常にとっつきやすいのではないでしょうか。

 

 

 

この鉄道を支えている人たちに会いたくなる

「お金がないなら、知恵を出すのよ!」廃止寸前である
赤字ローカル線の再生を託されたのは、元新幹線カリス
マ・アテンダント篠宮亜佐美、31歳。
魅力あふれる企画をくり出し、体あたりで頑張る姿に社内
も次第に活気づいていく。しかし度重なるトラブルに悩ま
される社員たち。
果たして赤字回復はなるのか?

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主人公の篠宮亜佐美、31歳は物怖じしない、欠点を利点に、
お金がないなら知恵を出す。

そうした視点から赤字克服のアイデアを次々と企画。
トラブルに巻き込まれながらも、しなやかに乗り越える
姿はお見事!です。

男性職員が多い社内で、反発をもたれる事もしばしば。
しかし、相手を立てながらも一歩もひかずに仕事を
させる手腕には感心させられます。

『女性』であることが欠点になることもあるけれど、
それを逆手に取って上手に利用しています。

そんな彼女ですが、完全無欠、というわけではありません。
31歳、現在独身。どうにもならない思いに涙することも
ある、普通の女性なのです。

そんな彼女が、覚悟を持って仕事にのぞむ姿は、見ている
人に力を与えてくれます。

また、その下で働く社員たちが、ひとりひとり事情を抱えながらも
会社に未来を感じて、明るくなっていく姿がいいのです。

笑顔と活気に溢れる彼らが運行する、このローカル線に
乗ってみたいですね。

 

 

ローカル線で行こう! (講談社文庫)

ローカル線で行こう! (講談社文庫)

 

 

なぜ散らかるのか?建築上の視点からアプローチ

散らかりやすい家に共通する「建築上の仕組み」
にメスをいれた、解剖図鑑シリーズ第2弾。
いつも整理の行き届いている家には、あらかじめ
「片づけやすい仕掛け」が施されているのです!!

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片付けてもすぐに散らかってしまう。
モノを持ちすぎ?あるいは収納方法が良くない?

実は住んでいる「家」が原因かもしれないという
衝撃的な事実を本書は述べています。

両親、子供二人の4人家族であるとしたら、
必要な食器はこのくらい、調理器具はこのくらい。
したがって台所にはそれらの量の食器を収納するスペースが
設けられていなければならない。

これを玄関、リビング、寝室などシーン別に紹介しています。

自分も会社員時代、管理部という部署にいたことがあります。
社内の引越し作業などを手がけると荷物が多くて
毎回収まらないと大騒ぎになります。

なおかつ、重要なのは動線。
キャビネット、机、FAXやコピー機など、各人が機能的に
動けるように配置する必要があります。

家庭内における動線ももちろん重要です。
ガス代、シンク、作業台、食器洗浄機など配置する場所に
よって使い勝手がだいぶ変わることは予想できます。

また、このイラストがとてもわかりやすい。
そして、機能していない住宅の施設について、少々の皮肉を
交えながらユーモアあふれる表現で解説しています。

これから住宅購入やリフォームを考えている方、またその予定は
ないけれど、いつもちらかってしまうことに悩んでいる方に、とても
役立つと思います。

 

 

片づけの解剖図鑑

片づけの解剖図鑑